2018 Fiscal Year Research-status Report

日本における“善き生”の構想とは何か─「正直」の倫理思想史／比較思想史的研究

Research Project

Project/Area Number	17K13323
Research Institution	Kogakkan University
Principal Investigator	板東洋介皇學館大学, 文学部, 准教授 (90761205)
Project Period (FY)	2017-04-01 – 2020-03-31
Keywords	国学 / 荻生徂徠 / 儒教 / 国際日本学
Outline of Annual Research Achievements	本年度の研究は主として国学の「正直」観念の思想史的研究と、その研究成果の国際発信とを中心として進められた。まず前者の「正直」研究であるが、本年度末に刊行した単著『徂徠学派から国学へ』の後半部分において、祝詞や万葉集研究を通じて以降の「正直」観念に決定的な影響を与えた国学者・賀茂真淵の思考について主題的に論じた。特にその第二部第三節は「正直」観念に相当する真淵の「直き心」についての専論である。本書は平成25年度に提出した博士論文を書籍化したものであるが、書籍化に際して六割以上の改稿を行ったため、本研究の「正直」研究の成果を大幅に盛りこむことになった。本書については複数の書評会や学会誌での書評などが予定されており、本研究の「正直」研究が広いインパクトを与えてゆくことが予想される。次に国際発信であるが、本年度内にチューリヒ大学と山口大学時間学研究所とが共催する国際シンポジウム「中世日本の時間意識」にchairmanとして招待され、英米独日およびスイスの研究者と中世日本の宗教的時間意識についての討論を行なった。さらに来年度にはドイツにて招聘を受けて日本・東洋の宗教・思想の固有性についてのプレゼンテーションが予定されており、本研究が国際的な評価を受けつつあるものと評価することができる。またドイツ語の『古事記』研究書の日本語への翻訳も着実に進展させており、最終年度（来年度）での翻訳完了と出版とを予定している。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 単著の刊行と国際シンポジウムへの招聘という本年度の研究業績の二点から、着実に研究成果をあげ、外部からの評価を獲得しつつあると判断できるため。
Strategy for Future Research Activity	最終年度となる来年度には、編集委員をつとめ、「正直」項目を執筆した日本思想史辞典と、共著論文集の刊行が予定されている。さらに国際シンポジウムへの登壇など、国際発信を進展させたい。
Causes of Carryover	国際学会への出席・発表を予定していたが、海外からの招聘を受け、旅費・宿泊費ともに先方負担となったため。