2019 Fiscal Year Research-status Report
日本における“善き生”の構想とは何か─「正直」の倫理思想史/比較思想史的研究
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17K13323
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
板東 洋介 皇學館大学, 文学部, 准教授 (90761205)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 東洋思想 / 日本仏教 / 正直 / 近世儒学 / 荻生徂徠 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究の主眼となる日本思想史研究の国際発信については、6月6-7日に渡ってドイツ連邦共和国のボン大学国際哲学研究センターで開催された国際シンポジウム "Nature, Technology, Metaphisics: An Encounter Between German And Japanese Philosophy" に招聘され、"Does Eastern Nothingness Really Exist?" と題する発表を行なった。本シンポはドイツを中心とする欧米の若手研究者8名と日本の若手研究者8名とが一堂に介して哲学の最先端を論ずるもので、その内容については日本語版・ドイツ語版の双方の刊行が予定されている。発表自体は英語で行なったが、その草稿を論文形式に直し、目下ドイツ語訳を依頼中である。また「正直」についての本研究の成果のもっとも端的なものとして、『日本思想史事典』(丸善出版)への中項目「正直と誠」の執筆を行なっていたが、当該年度内での他の編集委員との意見交換や改訂を経た上で、2020年4月30日に出版された。 また昨年の研究成果の中心であった単著『徂徠学から国学へ』(ぺりかん社、2020年3月刊)が当該年度中の12月に、第41回サントリー学芸賞(思想・哲学部門)を受賞した。これも本研究が日本近世の思想から摘出した倫理思想がアクチュアリティを有したものとして広く読書界に受け入れられた証左と自己評価できる。 さらに天野聡一『近世和文小説の研究』と中村春作『徂徠学の思想圏』という、本年出版された日本近世の国学・徂徠学研究のそれぞれを代表する著作について書評を依頼され、それぞれ『鈴屋学会報』『図書新聞』に発表した。これも本研究が日本近世思想史研究の進展への着実な寄与を行いつつある一証左である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国際シンポジウムへの招聘と学術賞の受賞という二点から、本研究の成果が国内外の学術界からきわめて高く評価されているものと判断できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本来は2019年度が最終年度であり、研究成果の国際発信(国際学会への旅費、英文校正費など)のために補助金を使用する予定であったが、国際シンポジウムに招聘されて2019年度中にその費用の支出の必要がなくなったため、来年度にさらなる国際発信を進め、ENOJP (European Network Of Japanese Philosophy ) などでの発表を行いたい。ただし昨今の情勢に鑑みて国際学会の延期・中止の可能性も考えられるため、その場合は国際学会誌への投稿など、柔軟に成果発表を行いたい。
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Causes of Carryover |
2019年度は研究成果の国際発信を目指し、国際学会参加のための渡航費を多く計上していたが、本年参加した国際シンポジウムが「招聘」扱いとなって旅費・滞在費の全額が先方負担となり、その分が次年度に繰り越されたため。さらなる成果の国際発信のため、2020年度の国際学会参加のための旅費、または国際欧文誌への論文投稿のための英文校正費として使用する予定である。
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