2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13325
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
服部 敬弘 同志社大学, 文学部, 准教授 (10770753)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミシェル・アンリ / 言語 / 現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
アンリ言語論の前提となる、現象概念について検討を行った。特にアンリがしばしば参照するハイデガー『存在と時間』第7節の現象概念を、アンリがどのように読解したかを詳細に検討した。アンリは、ハイデガーの「ファイネスタイ」としての現象を批判的に読解する。この現象概念からアンリは、まず「現出するもの」と「現出すること」との区別を引き出す。次に後者の契機を「現出する作用」として取り出し、これを根本的な現象概念とみなした後、さらにハイデガーを超えてこの作用の自己現出、「純粋現象性」の解明へと進む。これがアンリの内在概念を基礎づけるとともに、後年の「生の言葉」の前提ともなる分析である。ここには、フッサール時間論の「意識流」の読解や、「現象学の四つの原理」をはじめとする現象学関連の諸論文とも通底する、アンリ固有の視点を見出すことができる。しかし、アンリは、ハイデガーが現象概念に含めたもう一つの契機、ロゴスの契機については主題化しない。本研究が注目したのはこの点である。それは、「アポファイネスタイ」の契機である。ハイデガーにおいては、この「アポファイネスタイ」の契機によって、現象概念は、現出(開示)だけでなく、非現出(隠蔽)をも包括した概念として、つまり真理と非真理との共属性として捉えられる。この否定的契機を内包した現象概念を、純粋な開示態へとひそかに還元するアンリのハイデガー理解が、いかに生のロゴス理解に影響を及ぼしているかについて、『受肉』を中心に考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、予定されていた海外での調査を延期せざるをえなくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの終息を見越し、今年度中に海外での研究調査を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、予定されていた海外渡航を延期せざるをえなくなったため。この海外渡航の費用は次年度に使用する予定である。
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