2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13325
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
服部 敬弘 同志社大学, 文学部, 准教授 (10770753)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミシェル・アンリ |
Outline of Annual Research Achievements |
後期アンリのキリスト教解釈において重要な役割を果たす「生のロゴス」には独特の性格がある。それは「生のロゴス」と「世界のロゴス」とが鋭い対立関係におかれると同時に、「生のロゴス」にはいかなる「超越」の契機も認められない点である。「生のロゴス」がなぜこのように純化される必要があったのか。2021年度は、その背景について解明することを目指した。 本研究は主著『現出の本質』にまで遡り、そこで論じられる「絶対者」の概念に着目した。『現出の本質』の段階では、「生のロゴス」あるいは「生」の概念そのものは、いまだ主題化されていないが、「絶対者」の概念を通じて基本的な着想は素描されている。この「絶対者」の現出様態を主題化する際にアンリが参照するのが、ドイツ神秘主義(エックハルト)およびドイツ観念論である。ドイツ観念論における絶対者論で重要な分析対象となるのは、フィヒテのそれである。アンリはフィヒテの宗教論(『浄福なる生への導き』)を読解しつつ、フィヒテに絶対者=生の啓示が明示的に思惟されていることを認める。しかしその一方で、フィヒテにおいて生が反省と不可分の関係とみなされている点に徹底した批判を加えている。こうした生と反省との不可分性に対する批判は、ドイツ観念論に関するアンリの読解を通底している。 本研究はその背景を問うことで、アンリにおける生の純化の根源的動機を探った。その結果、本研究は、その動機として、ヘーゲルによる生と反省の統一から逃れようとするアンリの「反ヘーゲル主義的」企図が重要な役割を果たしている点を明らかにした。さらに、こうした姿勢が中期の『マルクス』におけるヘーゲル読解を経て、後期のキリスト教三部作のロゴス論へも継承されている点も合わせて指摘した。以上の研究成果の一部は、日本ミシェル・アンリ哲学会2021年度大会のシンポジウムにおいて公表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により海外渡航が中止となり、フランスでの資料調査を延期せざるをえなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、新型コロナウイルスの収束に伴い海外での自由な活動が可能となることが見込まれるため、フランスでの資料調査を実施する予定である。それに伴い、本研究課題の最終的な仕上げに取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により海外渡航を中止したため。次年度は海外渡航のための支出を予定している。
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