2022 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of an Integrated Interpretive Model of the Theory of Language in Late Henry's Thought
Project/Area Number |
17K13325
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
服部 敬弘 同志社大学, 文学部, 准教授 (10770753)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生の様態 / ラシエーズ=レイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「生の言葉」において重要な役割を果たす「生の様態」論の内実を明らかにすべく、アンリのカント解釈を改めて取り上げた。アンリのカント解釈は、戦前のフランスで影響力をもった二つのカント論、ナベール「カントにおける内的経験」(1924年)およびラシエーズ=レイ『カントの観念論』(1931年)を主要な参照項としている。特に、『現出の本質』の一部を構成する予定であった「合理的心理学の誤謬推理へのカントによる批判の存在論的破壊」は、カント自身に向き合うというよりも、むしろラシエーズ=レイのカント論に向き合うことで、カントの乗り越えをはかるものである。そこでアンリは、カント的主観性の形式性を批判し、内在としての「エゴの存在」の復権をはかる。しかし、アンリのカント解釈を、単に形式的な自我概念に「実質」を与え、論理的自我を「実在化」したものとみなすにとどまるなら、それはアンリのカント解釈を矮小化することになる。本研究は、アンリのカント解釈が、自我理解だけでなく世界理解にまで及ぶものであることを指摘し、それが「表象」としての世界から「生の様態」としての世界へと転換する試みであったことを明らかにした。アンリ独自の「質料=実質」概念にもとづく「生の様態」論は、世界を、〈生〉の自己産出の過程へと包摂し、自己閉塞的なカント的自我を、〈生〉の反映としての世界へと開く役割を果たしている。この「生の様態」論は、汎神論的な世界観と限りなく接近するものの、アンリにおける「生の言葉」が、なぜ自己関係性に閉じながら、多様な表現を許容するのかを説明する点で、重要な意義をもつと考えられる。
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[Book] ミシェル・アンリ読本2022
Author(s)
川瀬 雅也、米虫 正巳、村松 正隆、伊原木 大祐
Total Pages
350
Publisher
法政大学出版局
ISBN
9784588151279