2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on the Conflict between the Public Paramountcy Principle and Obligation to Consider the Environment in Engineering Ethics
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17K13326
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
藤木 篤 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (80609248)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 工学倫理 / 技術者倫理 / 公衆優先原則 / 環境配慮義務 / 公衆衛生倫理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症の影響により、本研究課題は助成期間を一年延長している。助成期間四年目にあたる令和2年度は、過去三年間の間に得られた文献の精読および内容の再検討を行った。近年刊行された工学倫理の教科書や改訂された倫理綱領等の内容を確認したところ、公衆優先原則の優位性に目立った変化は見られなかった。つまり、技術者の倫理的責務は「公衆の安全・衛生・福利」を最優先に考慮することであるという方針は、依然として大きな影響力を持つことがあらためて確認された。環境配慮義務についても、環境衛生倫理学領域を中心に文献の検討を行った。しかし、公衆優先原則と環境配慮義務の間にどのような関係性が成立するかについて、明確に言及する文献は発見できなかった。 こうした価値相反の関係は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、期せずして多くの課題を浮き彫りにした。例えば、コロナ禍での人工呼吸器の配分の問題や、移動や行動を制限することの是非とその理論的根拠、等が代表的なものとして挙げられる。本研究課題が焦点を当てる「公衆優先原則と環境配慮義務」の相反関係は、工学倫理に固有の問題としてだけではなく、より広範な領域においても成立しうる問題として捉え直す必要があるのかもしれない、という示唆を得られた。 なお令和2年度末に「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う科研費(基金分)の補助事業期間再延長承認申請書」を提出し、受理されているため、本研究課題の補助事業期間は令和3年度までとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
最大の理由は、新型コロナウイルス感染症の影響により、研究活動が大きく制約を受けたためである。昨年度同様、「米国で開催予定のAPPE(Association for Practical and Professional Ethics, 実践・専門職倫理学会)の年次大会へ参加し、本研究に関して海外有識者と意見交換を行うこと」を目標のひとつに掲げていたが、2021年2月の第30回大会はヴァーチャルイベントとして開催されたため、残念ながらフェイス・トゥ・フェイスの意見交換は実現できなかった。国内でもほぼ同様の状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、これまでの研究結果を、論文や口頭発表のかたちでアウトプットしていくことを目標に掲げる。その過程で、国内外の研究者と本研究課題に関する意見交換を行う。ただし新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響については、国内では医療従事者や高齢者を対象としたワクチン接種が開始されたものの、変異株の登場等により、依然として予断を許さない状況が続いている。緊急事態宣言や「まん延防止等重点措置」等の動向に最大限配慮しながら、感染拡大防止に対して差し支えのない範囲で、研究活動を継続していく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度末時点で未公刊の文献が確認できていたため。2021年度は、刊行された文献を速やかに入手することによって、次年度使用額を適切に執行する予定である。
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Research Products
(2 results)