2017 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Metals in Vedic Literature
Project/Area Number |
17K13329
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 智輝 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD) (30722962)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ヴェーダ文献 / リグヴェーダ / ayas / 金属 / 鍛冶 / Lohar |
Outline of Annual Research Achievements |
ヴェーダ文献における金属関連語について,文献学的研究を行った。具体的な対象としては,ayas-「金属,鉄」,loha-「銅」等の卑金属類,hiraNya-「金」,rajata-「銀」等の貴金属類,karmAra-「鍛冶屋」,dRti-「革袋(鞴)」,dhmA「吹く」等の冶金関連語,vajra-「武器ヴァジュラ」,asi-「畜殺用の刃物」等の金属製品(若しくは金属製と思われる製品)が挙げられる。新規の用例の翻訳及びこれまでの研究のアップデートも行い,文献学的研究データの集積を行った。 インド,ラジャスタン州ウダイプルにおいて,同市に生活する鍛冶屋コミュニティであるLoharの人々について,現地調査(インタビュー,写真・動画撮影)を行った。現在では既製品の鎌等のメンテナンスを主な仕事としており,金属製品の製造は既に行ってはおらず,また,作業道具についても主に工場製品が用いられていた。しかしながら,山羊の革で作られた旧来の鞴を残している家が一軒あり,唯一使用法を知る一家最年長の女性に,鍛冶作業で実演していただくことができた。リグヴェーダ以来,鞴には革袋が用いられることが知られるが,文献学からうかがい知られる文字情報の視覚的理解に資する,非常に貴重な情報が得られた。 Janardan Rai Nagar Rajasthan VidyapeethのKharakwal教授(先史学,考古学),The Maharaja Sayajirao University of BarodaのP. Ajithprasad教授(考古学・古代史研究科)とインドで面会し,上記の調査結果及び今後の研究の方向性について,意見交換を行った。本研究では,他分野の研究領域の知見の援用も,積極的に取り入れているが,インドでの研究協力者を得られたことは,今後の研究の進展に資する成果に位置づけられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
文献学的研究については,研究対象の扱う順序に多少の変更はあったが,概ね予定通りに進行している。他方,インドでの現地調査を通じて,文献から読み取られるイメージを補完するような情報の獲得に成功したことは,文献研究の新しい可能性を切り開く,大きな成果であったと言える。また,Kharakwal教授,Ajithprasad教授ら,インドの研究者からの協力を得られる体制も整ったため,今後は学際的な視点を従来以上に文献研究に用いることにより,研究がさらに大きく進展する可能性も見込まれる。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度で得られた研究成果については,「印度学宗教学会第60回学術大会(2018年5月26日,27日,東北大学)」,及び「国際シンポジウム 南アジアの鉄器時代(2018年6月2日,3日,関西大学)にて,発表を予定している。 研究は引き続き,ヴェーダ文献を対象とした文献学的研究を中心に進める。しかしながら,ヴェーダ文献からは,鍛冶屋はインド・アーリヤの伝統外に位置する人達によって担われていたことが暗示され,そういった人々に関する言及は必然的に限定される傾向にある。二年目からは,ヴェーダ文献のみならず,アルタシャーストラや初期仏典も研究対象に含めることを予定している。 また,ヴェーダ文献群を構成する各々の文献の年代と地理的背景(Witzel “Tracing the Vedic dialects”, 1989による)と,同文献における金属関連語の使用状況との照合作業も,二年目からは本格的に行う。卑金属類については初年度の段階で既に作業を進めており,その検証結果は,上記の学会及びシンポジウムにて発表する予定である。
|
Causes of Carryover |
パソコンを購入予定だったが,購入を見送り,海外旅費に充てた。生じた差額分は,次年度の国内旅費及び物品費に充当する予定である。
|