2018 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Metals in Vedic Literature
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17K13329
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 智輝 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (30722962)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヴェーダ文献 / 卑金属 / 貴金属 / リグヴェーダ / ayas- / hiraNya- |
Outline of Annual Research Achievements |
三カ年計画の二年目に該当する本年度の研究実績としては,初年度までに積み上げてきた研究成果の発表,並びに,貴金属類に関わる文献学的研究成果の蓄積の二点が,主要なものとして挙げられる。以下に各項目毎に概要を報告する。 【研究成果の発表】第60回 日本印度学宗教学会学術大会(2018年5月26日,於東北大学,発表タイトル「ヴェーダ文献における卑金属類を巡って」)及び,International Symposium on Iron Age in South Asia(2018年6月3日,於関西大学,発表タイトル「On Base Metals in Vedic Literature」)にて,卑金属に関連するこれまでの文献学的研究成果について,昨年度末にラジャスタン州ウダイプルにて実行した現地調査の報告も含めて,発表を行った。特に後者の国際シンポジウムにおける発表では,考古学の分野のシンポジウムであることに鑑み,各ヴェーダ文献に想定される年代順や地理的背景に特に着目しながら,卑金属類利用の歴史的展開について論じた。発表内容については,同シンポジウムの紀要に論文を寄稿した(タイトル『On Base Metals in Vedic Literature』)。 【文献学的研究】本年度はhiraNya-「貴金属,金」を中心に研究を進めた。同語は最古のヴェーダ文献であるリグヴェーダの段階から,非常に多くの用例を有する。しかしながら,「貴金属,金」という物質そのもののみならず,「火」や「太陽」のような「光り輝くもの,美しいもの」等に対する比喩表現中にも多用される。本研究では,物質文化を窺い知るための一次資料の提示を研究目的に掲げていることから,まずは「貴金属製品」に研究対象を限定し,文献学的研究を行った。具体的な研究対象としては,rukma-「金/銀製の円形プレート」,niSka-「金/銀製の首輪」といった貴金属製品,形容詞hiraNyaya-「貴金属/金製の」,さらにはhiraNya-及びそれが前部に付く複合語等が挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
考古学の分野における国際シンポジウムでの発表,及び論文の寄稿を通じて,研究計画の段階で主要な研究手法の一つとして設定した「他分野との連携」を実行することができた点は,本年度における大きな成果の一つに位置付けられる。同様の研究手法はこれまでにあまり試みられてこなかったが,本年度の実践を経て,次年度の研究,さらには,金属類以外の物質文化研究においても,同様のアプローチは有効な手段として機能する可能性が見込まれる。 また,本研究の中心に位置付けられる文献学的研究成果についても,着実に積み重ねることができた。貴金属類は用例数が多いため,全てを網羅するためには未だ時間を要するが,往時の金属利用の実態解明に資する研究成果は,順調に蓄積されてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度に該当する。hiraNya-「貴金属,金」,rajata-「銀」等の貴金属,並びに,貴金属製品に関わる用例の文献学的研究の継続が,本年度の主要な研究内容となる。特にhiraNya-「金」については,派生語,複合語を含め,膨大な用例数が存在し,さらに,多様な主旨の文脈で言及されるため,ヴェーダ文献中の全用例を網羅するためには,十分に時間をかける必要がある。しかしながら,文献毎に登場する貴金属製品に差が見られるなど,用例数が豊富であるが故に,卑金属の事例とは異なった方向性から,新たな知見が得られる可能性が見込まれる。前半期を目処に,全ての用例の精査を終え,後半期には研究成果全体の総括に時間を充てる予定である。 卑金属類,貴金属類双方のこれまでの研究成果については,2019年8月19日から24日にクロアチア共和国ドゥブロヴニクにて開催されるThe 7th International Vedic Workshopにて「On Base Metals and Precious Metals in Vedic Literature」のタイトルで発表を予定している。
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Causes of Carryover |
スケジュールの都合上,カナダでの学会発表を見送ったため,当初の計画段階で計上した200千円の外国旅費を使用しなかった。次年度使用額は平成31年度のクロアチアでの学会発表に繰り越す予定である。
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Research Products
(3 results)