2019 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsider "Hanhua" during the Northern Dynasties
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17K13330
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 恭哉 京都大学, 文学研究科, 准教授 (50709235)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 『隋書』 / 辛彦之 / 牛弘 / 『隋朝儀礼』 / 王倹 / 王通『中説』 / 北朝 / 漢化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に新たに構想した研究を、具体的な論考として査読誌に発表した。それが「『隋書』の成立とその問題―辛彦之の没年と明堂の議論から」(『六朝学術学会報』21集、2020年)である。通説では、『隋書』という正史は、先に完成した本紀・列伝に、別に後から成った志を合わせたものとされてきた。だが辛彦之の列伝と、志に見える明堂の議論などを詳細に比較検討した結果、本紀・列伝と志とは、単純に合体したものではなく、両者の間で編集がなされていた事実が明るみになり、通説に修正を迫ることとなった。『隋書』は、隋一代の歴史のみならず、特に志を中心に南北両朝の文化・制度を総括した正史であり、本論考によって、隋代において南北両朝の文化が如何に吸収されたのかを考察する際の基礎史料としての『隋書』の性格が、一段と明確になった。 また中国湖南大学岳麓書院で行われた第八届中国経学国際学術研討会(2019年)では、「牛弘と隋代礼制―『隋朝儀礼』を中心に」と題して口頭発表(中国語)をした。本研究で一貫して考察対象としてきた隋の牛弘について、本発表では、その礼制の構築という側面に着目した。その結果、牛弘自身は北朝の出身であり、言葉の上ではしばしば南朝の礼文化・制度に批判意識を示しつつも、実際の礼の運用(『隋朝儀礼』など)となると、南朝斉の王倹の礼体系を存分に取り入れていたことが明らかになった。北朝の漢化を踏まえ、隋における南北両朝の礼文化・制度の融合という観点から、今後も考察を深化させていく予定である。 加えて連載を続けてきた王通『中説』の訳注も、「王通『中説』訳注稿(六)」(『香川大学教育学部研究報告』2号、2020年)として発表した。今後も継続して発表し、この内容分析も、隋代士人における文化認識についての考察に活かしていきたい。
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