2017 Fiscal Year Research-status Report
上座部仏教における註釈家の相対・絶対年代と思想系譜
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17K13335
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
清水 俊史 花園大学, 文学部, 研究員 (40718996)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダンマパーラ / アーナンダ / マハーナーマ / ウパセーナ / 上座部註釈家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当初の計画予定通りに文献読解を進めた。上座部註釈文献の跋文に残されている記録を、『島史』や『大史』などの諸資料と併せて検討した。そして、ダンマパーラ、アーナンダ、マハーナーマ、ウパセーナ、ダンマシリ、ヴァジラブッディなど註釈家たちの絶対年代・相対年代について十分な新知見を得ることができた。また、これと関連して、スリランカ在住の学僧より、国内の大学図書館未所蔵の貴重な資料の提供があったことも、本研究を進めるうえで極めて有益であった。 そして、この読解作業中に、一部の註釈文献において、北伝仏教の論書からの逐語的引用があることを発見することができた。そのため当初の予定を繰り上げて、漢訳資料やサンスクリット資料の検討も進め、この比定作業に従事した。この引用されている文脈は難解であるため未だ十分な理解には至っていないが、上座部と北伝仏教の貴重な思想的接点であり、より正確な註釈家たちの年代論および思想的特徴を特定することが叶ったことは大きな成果といえる。 なお、以上で述べた成果は、本研究課題と関連する分野にも波及し、相乗効果を得ることができた。具体的には、上座部註釈家たちが抱いていた聖典観(書写聖典、経巻崇拝などの位置付け)を、北伝仏教のそれと比較することで、その特徴・意義を明確にすることができた。 これらの成果の一部は学術雑誌などで既に公表されており、これからも学会での口頭発表、ならびに学術雑誌の紙面上で発表していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第一に、これまで不明確であった上座部註釈家たちの絶対年代・総体年代について、幾つかの点で新事実を明らかにすることができた。第二に、またこれと関連して、上座部における「書写聖典」「経巻崇拝」の有り様についても新知見を得ることができた。以上の二点から、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ダンマパーラ、アーナンダ、マハーナーマ、ウパセーナの四者の絶対年代・総体年代を論文にまとめ学術雑誌に投稿することを予定している。 また、上座部註釈家と北伝仏教の交流についても考察していく予定である。
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Causes of Carryover |
差額分を生かして、国内出張の回数を柔軟に調整してより効率的な研究遂行を計る。
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Research Products
(9 results)