2018 Fiscal Year Annual Research Report
Historical theory of Reinhart Koselleck and politico-religious totalitarianism theory
Project/Area Number |
17K13340
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遠藤 健樹 東北大学, 文学研究科, 助教 (80739970)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 世俗化 / 政治宗教 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30度の研究成果は、2018年11月に行われた日本現象学・社会科学会での研究発表「ラインハルト・コゼレックにおける歴史学的人間学」である(なお、同発表を適宜アップデートし論文化したものを研究期間終了後に投稿予定)。当該年度は、コゼレックの歴史理論のうち歴史学的人間学に関わる側面を明らかにするため、『過ぎ去った未来』『歴史の諸層』所収の論文を分析対象とした。結果的に明らかとなったのは次の点である。 ①コゼレックの歴史学的人間学にとって重要な概念である「対立対」「非対称的対立概念」が、彼の師であるカール・レーヴィットの哲学的人間学に由来するものであること。②コゼレックはハンス・ゲオルク・ガダマーの主張する歴史理論の言語性に対抗して、対立対、非対称的対立概念の前言語性を強調したが、こうした強調は、レーヴィットの哲学的人間学が言語的コミュニケーションを下支えする承認の問題を考慮に入れていたことから説明可能であること。以上である。 研究期間全体を通じての研究成果は次のとおりである。申請者は研究開始当初、コゼレックが政治宗教的全体主義批判から距離をとるなかで、非対称的対立概念を強調する歴史理論を彫琢していったと想定していた。実際コゼレックは、全体主義をある種の政治宗教として批判するべく世俗化論を当初は肯定的に評価していたが、のちに自身の歴史理論を仕上げていくにつれあまり重視しなくなっていった。このことは確認できたのだが、平成29年度にドイツで行った文献調査の結果、コゼレックが最初期に執筆した57年の博士論文「批判と危機」で(同論文をもとにした同名著作と異なる構成を採用することにより)、すでに非対称的対立概念を相当重視していたのではないかという疑義が出てきた。この疑義は研究期間中に適切に処理できなかったので、以後も引き続き検討する。
|