2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13342
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐藤 愛 立命館大学, 言語教育センター, 嘱託講師 (00779556)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミンコフスキー / ブロイラー / 同調性 / 分裂性 / チューリッヒ州公文書館 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、ミンコフスキーの同調性概念に関し、彼の師であるブロイラーの精神医学との関連性から考察した。具体的にはまず、チューリッヒ州公文書館に赴き、ミンコフスキーとブロイラーの交流の痕跡に関して同館が所有する資料から、同概念の形成過程について調査した。これによって計画当初からの仮説であった、同概念についてのブロイラーからミンコフスキーへの影響の大きさを確認することができた。加えて、本研究が研究対象とする精神医学者ウジェーヌ・ミンコフスキーの兄である神経学者ミエテク・ミンコフスキーと、チューリッヒ大学附属病院との関係の深さについて、同様の手法によって調査し、明らかになった。 以上チューリッヒでの調査結果二点から分かるのは、同調性概念が形成された時期の、チューリッヒとミンコフスキーの強い結びつきであった。ミンコフスキーは、精神医学に関わる研究面については、同地でブロイラーから多大な影響を受けていた。また生活面では、ワルシャワから渡って来た兄のおかげで、ポーランド系ユダヤ人として他の土地よりもより暮らしやすい状況にあった。このように複合的に利のある状況下にあったにもかかわらず、ミンコフスキーは同概念の形成時期に、第一次世界大戦中のフランスに渡った。ここから、同調性概念の形成に関し、フランスに渡ったことの思想的意義が改めて明らかになった。この点について、次年度の学会発表のための準備となる調査を十分に行うことができた。 加えてフランス国立図書館でも調査時には、現代のベルギーの哲学者ミシェル・ウェベールによる、同概念についての貴重な先行研究を入手することができた。これら平成29年度の研究成果の一部については、平成29年11月の精神医学史学会で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、平成29年度に精神医学の分野から同調性概念について調査し、平成30年度に哲学の分野から同概念について調査する予定であった。前者については、平成29年度の調査後、計画通り精神医学史学会で研究発表を行うことができた。また後者については、平成30年度すでに学会発表にエントリーし、発表許可をいただいている。 加えて、平成29年度の夏期と春期、すでに二度の海外の資料調査に赴くことができている。春期の調査は、平成30年度の夏期に予定していたものを、夏期に調査報告に関わる論文を執筆することに集中するため、前倒しして行ったものである。 以上の二点から、研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、まず平成30年6月にミシェル・アンリ哲学会で発表を行う予定である。この点に関しては、すでに応募し、発表の許可が下りている状態にある。さらに、発表した原稿を同学会の学会誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度の春期にフランス国立図書館での調査に赴くために、調査旅費を前倒し申請したが、その旅費を国内出張で使用したため、フランス調査分の旅費に当てることができなくなった。そのため、残りの次年度使用額と合わせ、改めてフランスでの調査旅費は平成30年度に申請することとなったため。
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