2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13343
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森川 裕貫 京都大学, 人文科学研究所, 特定助教 (50727120)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 五権憲法 / 孫文 / 知識人 / 中国近現代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題実施1年目に当たる2017年度は、孫文の在世および死後に公表された、五権憲法に関する史料の収集に努め、中国語で著述された著作、雑誌・新聞記事を大量に入手した。また、これまでの研究ではそれほど重視されていない英語で執筆された史料も入手することができた。以上の作業により、次年度以降に向けた研究基盤の整備を進めることができた。このほか、学会・ワークショップ・シンポジウム(ソウル(6月)、東京(10月)、名古屋(10月))での報告の機会を利用して、国内外の研究者との意見交換を行い、研究課題に関する有意義な知見を得ることができた。また、京都大学人文科学研究所を訪問した海外の研究者とも議論を行い、特に史料面について多くの貴重な情報を得ることができた。なお、関連する研究成果として、「「五五憲草」解釈から見る五権憲法――雷震と薩孟武の所論をめぐって」(日本孫文研究会編『孫文とアジア太平洋――ネイションを越えて』汲古書院、2017年所収)を公表した。五権憲法について多くの著述を残した雷震と薩孟武は、いずれも大正時代の京都帝国大学で学んだ経験を持ち、その思考の分析は五権憲法をめぐる議論の理解に役立つだけではなく、大正時代以降の日本と中国の思想連鎖の問題を考察する上でも重要な手がかりを示しているとの見通しを得た。この見通しに依拠して、1920年代から40年代にかけて日本でなされた五権憲法や憲法学に関する議論の動向にも、可能な限り留意している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果の一部を公表できたこと、史料の収集を通じ、課題遂行のための基盤整備を進展させられたことがその理由である。なお、当初の研究計画では必ずしも予定していなかったが、五権憲法について深い関心を抱いた人物のなかで、最も影響力があったと考えられる蒋介石に関しても、史料の収集・読解を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した大量の史料の読解を進め、分析を行うことを第一の課題としたい。また、五権憲法の構想を組み立てる際に、孫文が参照した文献については、まだ必ずしも十分な収集ができていないので、その収集にも努力したい。その上で、五権憲法や孫文について深い見識を有する海外の研究者に対し、分析の結果得られた知見を発信するようにしたい。具体的には、2018年度も、学会報告などを通じ、国外の研究者との意見交換の場が複数回得られる予定であるので、その機会を利用して、海外の研究者の批評を仰ぎたいと考えている。
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