2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13343
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
森川 裕貫 関西学院大学, 文学部, 准教授 (50727120)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 五権憲法 / 孫文 / 蒋介石 / 『新生命』 / 中国近現代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、五権憲法に関する言論のなかでも、特に1928年に創刊された雑誌『新生命』に集った人士によるものに注目し分析を進めた。『新生命』は国民党、特に蒋介石、戴季陶らと強い関わりを有し、また「中国社会性質論戦」において積極的な論陣を張った雑誌として知られるが、五権憲法についても複数の評論が見られる。しかも、それら評論を執筆した梅思平、金鳴盛、薩孟武らは、その後も継続して五権憲法について議論しており、国民党系統の人士の五権憲法観を理解する上で分析が不可欠な対象である。現在までの検討の結果、『新生命』におけるこれら人士の五権憲法に関する見方には少なくない分岐があり、そうした分岐は1930年代以降の五権憲法をめぐる議論にも影響をおよぼしているとの見通しを得ている。 また、五権憲法に深い関心を抱いていた指導者である蒋介石について、その代表的著作『中国之命運』を通じた検討を行った。『中国之命運』においては、必ずしも五権憲法に関する議論が直接展開されているわけではない。しかし、中国の指導者としてそして孫文の後継者としての蒋介石の自己認識を把握する上で、同書の分析は重大な意義を有する(その分析の成果の一端は、共著『中国近代の巨人とその著作』の執筆担当部分において示したところである)。こうした蒋介石の自己認識をふまえつつ、彼が五権憲法そしてそれに基づき起草された『五五憲草』(1936年)についていかなる評価を下していたのか、関連史料を収集し検討を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度に実施した史料収集の成果を利用しつつ、五権憲法がいかに解釈されたのかについて分析を進めていること、また五権憲法につき深い関心を抱いた人物のなかで最も影響力のあった蒋介石についても検討を行い、一定の成果を公表できたことがその理由である。さらに、シンポジウムや学会報告の機会を利用して、中国・台湾の研究者と意見交換を行い、特に史料面について複数の貴重な提言を受けることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、収集した中文史料の分析を進め、五権憲法に関する様々な見解を整理していくことを試みる。なお、2018年度は五権憲法に関する英文の史料の収集も行った。中文史料と比較するとその量はきわめて少ないものの、従来の研究では必ずしも重視されていないと考えられる。それら英文史料にも留意しつつ、検討を進めていくこととする。
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