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2017 Fiscal Year Research-status Report

Analyzing the Process of Creating a "Nationalistic" canonic Repertory: A Case Study of Piano Exams at the Conservatoire national de musique de Paris

Research Project

Project/Area Number 17K13347
Research InstitutionTokyo National University of Fine Arts and Music

Principal Investigator

上田 泰  東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 非常勤講師 (90783077)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywordsパリ音楽院 / ピアノ教育 / カノン形成 / 「フランス的」規範 / 定期試験曲目 / レパートリー
Outline of Annual Research Achievements

平成29年度の研究は、パリ音楽院ピアノ科で行われた定期試験(1890~1956)の曲目一覧化作業のうち、1890年から1912年までの期間について、データ入力を行った。ジャンルが同定された曲数は延べ5495件、作曲家が同定された曲目数は延べ5445件である。
10年ごとのデータ数は次の通り(以下件数はすべて延べ)。a)1890年1月~1899年6月=ジャンル:2696件、作曲家=2557件。b)1900年1月~1909年6月=ジャンル:2102件、作曲家:2060件(*G.フォーレの院長就任[1906年]を機に、定期試験が年に2回から1回になった)。続く10年は、入力を終えた1910年6月から1912年6月に限ってみると、c)ジャンル:529件、466件である。
上の10年毎の期間につき、ジャンル、作曲家の傾向を分析した。ジャンルについては、27項目を設けて分類した。a,b,c期の特徴的な作曲ジャンルは件数の多い順に、ソナタ、協奏曲で、1870年代から変化していない。練習曲、フーガの割合が大きいことも従来の傾向と同じであるが、他方、少数ながら、それまでにはなかった新しいジャンル、交響詩が導入されたことはレパートリー刷新への努力と見られる。
作曲家に関しては、実数にして107名が特定された。a,b,cの各期間を通して、多いのは1810年代生まれのショパン、シューマン、リストで、彼らの作品がレパートリーとして定着していたことを示す。フランスの作曲家を重視する傾向は、この3期間で次第に強まっている。a)では7.4%、B)では10.8%、C)では12.3%。この増加の主因は、フォーレの院長就任後、彼の作品が取り上げられるようになったためである。本研究の主眼である「フランス的」規範の成立という観点に照らすなら、フォーレ作品の受容に端を発していることが明らかとなった点が重要である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成29年度の目標は、フランス国立古文書館で史料を収集し、それに基づいて1890年から1912年までの定期試験曲目データを、各教授が書いた生徒の学習状況進捗にかかる報告書(A群)および教育委員会議事録(B群)から転写し、曲目データ(タイトル、作品番号、調、出版年、ジャンル)を抽出することだった。B群の転写作業は完了していないものの、A群にほぼすべての曲目が記載されていたため、結果を導く上で大きな問題にはならない(念のため、平成30年度にB群の転写作業も継続する)。また、A群に欠如していた曲目の記録は、すべてB群から補うことができた。これにより、1890年から1912年までの傾向を分析するところまで研究を進め、一定の成果を出すことができた。計画では、各試験官のコメントが記された史料(C群)も転写する予定であったが、A群, B群ですでにすべての生徒の演奏記録がほぼ網羅できるため、C群は演奏曲目のさらなる詳細を確認するために、補助的に用いることにした。
以上より、本研究は着実に目標へと向かっており、平成30度の成果を十分に達成していると評価した。

Strategy for Future Research Activity

平成30年度は、1913年から1935年までのデータ入力を行う。この期間の入力の基となる史料は、平成29年度に大部分を収集したものの、収集しきれなかった史料(特に学生名簿)や音楽院の運営にかかる文書を参照するために、8月にフランス国立文書館で収集する。平成31年度には、本課題の目標である1956年までのデータ入力を終える予定である。これまでのデータの転写作業効率に鑑み、本研究は順調に目的に到達できるものと見込まれる。
成果の発表に関しては、平成29年度分のデータ分析結果を日本音楽学会全国大会で発表するつもりである。

  • Research Products

    (7 results)

All 2018 2017

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results) (of which Invited: 1 results) Book (2 results)

  • [Journal Article] 19世紀初期のフランス・ピアノ音楽におけるスイスのイメージ表象とペダルの用法(1804~1823):パリ音楽院ピアノ科教授L. アダンとJ. ヅィメルマンの作品におけるランズ・デ・ヴァーシュを中心に2018

    • Author(s)
      上田泰史
    • Journal Title

      『東京藝術大学音楽学部紀要』

      Volume: 43 Pages: 1-16

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] ヌーヴェル・アテネにおける「趣味の殿堂」:音楽雑誌を通して見るP. J. G. ヅィメルマンの芸術サロン(1832-1844)2018

    • Author(s)
      上田泰史
    • Journal Title

      『研究紀要』(国立音楽大学)

      Volume: 52 Pages: 1-12

  • [Presentation] 19世紀初期のフランス・ピアノ音楽におけるスイスのイメージ表象とペダルの用法(1804~1823):パリ音楽院ピアノ科 教授 L. アダンと J. ヅィメルマンの作品における ランズ・デ・ヴァーシュを中心に2017

    • Author(s)
      上田泰史
    • Organizer
      日本音楽学会第68回全国大会
  • [Presentation] 七月王政時代のパリと音楽サロン:パリ音楽院教授J. ヅィメルマンをめぐって(1832~1845)――2017

    • Author(s)
      上田泰史
    • Organizer
      国立音楽大学総合ゼミ
    • Invited
  • [Presentation] 19 世紀初期のフランス・ピアノ音楽におけるスイスのイメージ 表象:ランズ・デ・ヴァーシュと ペダルの用法を中心に2017

    • Author(s)
      上田泰史
    • Organizer
      平成29年度育志賞研究発表会
  • [Book] 『パリのサロンと音楽家たち:19世紀の社交界への誘い』2018

    • Author(s)
      上田泰史
    • Total Pages
      240
    • Publisher
      カワイ出版
    • ISBN
      4760950230
  • [Book] 『19世紀ピアニスト列伝』2018

    • Author(s)
      上田泰史
    • Total Pages
      未確定
    • Publisher
      全日本ピアノ指導者協会

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Published: 2018-12-17   Modified: 2019-08-29  

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