2018 Fiscal Year Annual Research Report
'De Stijl' and principles of composition by George Antheil
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17K13351
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
池原 舞 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 講師(任期付) (80710467)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジョージ・アンタイル / 《バレエ・メカニック》 / プレイヤー・ピアノ / デ・ステイル |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目は、ニューヨーク公共図書館に所蔵された「アンタイル・コレクション」を閲覧し、1年目の成果と合わせて分析した。 アンタイルは「Pianist - Futurist(ピアニスト - 未来派)」といった表現で戦略的に自らを売り込んでいた。しかし、20世紀初頭に活躍した「イタリア未来派」と直接的な接点はなく、思想も大きく異なっていたことが、1924年の「デ・ステイル」誌に寄稿された「機械音楽のマニフェスト」の内容から明らかになった。「未来派」の思想が「人間による機械の模倣」に端を発していたのに対し、アンタイルはむしろ「機械による人間の模倣」に挑戦しようとしていた。 1920年代にヨーロッパで爆発的に隆盛したプレイヤー・ピアノを《バレエ・メカニック》に導入しようとしたいきさつには、この新たな楽器にいち早く目をつけていたイーゴル・ストラヴィンスキー(1882-1971)との交友が関与していた。しかし、ストラヴィンスキーが辿った道と同じく、複数のプレイヤー・ピアノの同期の困難により、アンタイルが最初に思い描いていた音響構造による《バレエ・メカニック》は実現に至らなかった。 この時期のアンタイルの美学的思想は、とくに「デ・ステイル」の画家ピート・モンドリアン(1872-1944)の「新造形主義(ned-plasticism)」と呼応していたことがわかった。モンドリアンは、「個別的な思想」を排除し、「抽象化」することを謳ったが、アンタイルはその美学を音楽分野で演繹した。アンタイルは「音楽の抽象化は振動を通じては達成できない、つまり音が鳴っている状態では成し得ない」と考えた。そしてそれを体現すべく、《バレエ・メカニック》の最後に、最大約20秒続く無音を置いた。 アンタイルは新たなテクノロジーを、単に物珍しい媒体として興味本位に捉えたのではなく、独自の時間空間美学を表現するために用いた。
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