2021 Fiscal Year Annual Research Report
British Theories of Taste and Avant-Garde Art Between the Two World Wars
Project/Area Number |
17K13355
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石井 祐子 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (60566206)
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Project Period (FY) |
2018-02-28 – 2022-03-31
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Keywords | 両大戦間 / イギリス美術 / モダン・アート / 前衛 / 趣味 / ハーバート・リード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、両大戦間期のイギリス美術における「趣味(taste)」への志向が、同地での前衛的美術の展開と互いにどのような作用を及ぼし合ったのかについて、美学的言説、生活空間、前衛美術の具体的実践の領域の有機的連関から明らかにすることを目的とする。そのために、以下の三つの課題に取り組んだ。I) 両大戦間期の美学的言説とその実践の場〔A〕(「よき趣味」の規範化に関わる領域)における趣味論の射程を考察し、前衛美術との関わりと位置付けを明らかにする。(II) 同時期の生活空間やマスメディアと密接な関連を持つ視覚文化〔B〕における趣味論の受容や教化、伝播や自律的展開のダイナミズムを明らかにしたうえで、前衛美術との関わりを考察する。(III) 上記〔A〕〔B〕の領域を自覚的に横断する同時期の前衛美術〔C〕の領域を見極め、全体の概念モデルを再構築する。 本研究課題は当初三年の研究期間を予定していたが、研究代表者のライフイベントによる中断や世界的な感染症拡大の影響により延長された。本年度も引き続き国内外の移動の制限が行われたため、関連する渡航調査等の中止が余儀なくされたが、着眼点や計画を多少修正して研究を遂行し、日本での英国趣味(論)の受容の問題にも考察を伸張することができた。本年度は、昨年度からの継承として、両大戦間のイギリスで前衛美術に関わった芸術家や批評家たちが、具体的にどのような論理で前衛美術を「趣味」の問題圏に布置したのか、あるいはどのような戦略でそこから距離を取り、どのような結果をもたらしたのかについて考察した。とりわけ1930年代のハーバート・リードやポール・ナッシュらの活動に関する考察の成果の一部は、グラスゴー大学と共同で開催した2件の国際シンポジウムでの口頭発表に反映されており、同シンポジウムの報告集は2022年に刊行予定である。
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Research Products
(3 results)