2017 Fiscal Year Research-status Report
Modernity and Nationalism in the Murals of Merchant Houses in Colonial India
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17K13359
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
豊山 亜希 近畿大学, 国際学部, 講師 (40511671)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植民地インド / 商人 / 建築 / 近代化 / タイル / 民族運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
3カ年の研究計画で実施する本研究課題の初年度にあたり、平成29年度は研究環境の整備、基礎資料の収集と分析、およびそれに基づくフィールドワークと結果報告としての学会発表を実施した。研究環境の整備にあたっては特に、研究の核となるデータ群(大量の写真データと外国の研究機関で収集した資料の電子データ)を整理・分類するために必要となる物品の選定・調達を行った。そのうえで、研究対象となる植民地インドの商家建築に関する基本的な情報を収集するため、2017年8月下旬~9月上旬にかけてイギリスの大英図書館内にあるインド省資料館において、イギリス統治下のインドにおける現地商人の活動に関する記録を調査し、それをもとに商家建築の造営状況と現存状況について分析した。このデータをもとに、イギリス統治下の「インド」に含まれる現在のインド、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマーの主要都市における3カ年のフィールドワークの計画を具体的に策定した。この計画を踏まえて、初年度はミャンマーをフィールドワーク実施先と決定し、2018年2月下旬~3月上旬にかけて、首都ヤンゴン、港町モーラミャイン、旧都マンダレーにおけるインド系コミュニティの建築に関する調査を実施した。初年度の研究成果は、2018年3月下旬にアメリカ・ワシントンDCにおいて開催されたAssociation for Asian Studiesの年次大会にて報告し、参加した外国研究者と活発な意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3カ年計画の初年度の研究は、おおむね順調に進呈した。フィールドワーク先として選定したミャンマーは、当初計画においては研究対象に含んでいなかったが、植民地インドの一部をなしており、当時から現在までインド系商人が活発に活動しているとみられること、ミャンマ-独立後から現在に至るまで本格的な建築研究が行われていないこと、近年の経済発展に伴う文化遺産の保存修復が急務であること、といった観点から、喫緊の課題として研究対象に含めることとした。ミャンマーに現存する商家建築の実態把握と、その存在意義をアジア近現代史の枠組みのなかで巨視的に位置づけることを目指してフィールドワークを実施した結果、当初予想以上の成果が得られた。具体的には、インド系コミュニティの人口が、政府の公式発表よりも明らかに多いとみられ、それゆえにインド系コミュニティが信仰するヒンドゥー教、イスラームの礼拝施設が相当数現存していることが判明した。さらに、植民地期にインド系コミュニティと同じく宗主国イギリスを相手にした商業活動で財をなしたミャンマーの現地商人も、同様の建築活動を盛んに行い、インド系コミュニティの建築群と様式的類似性がみられることも判明した。こうした事実については、これまで先行研究に指摘された形跡はないことから、本研究課題の大きな成果であると位置づけることができると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる今年度は、インド系商人によって造営された商家建築の現存先として、バングラデシュとパキスタン、さらにスリランカにおいてもフィールドワークを実施する予定である。いずれの国も、インド系商人がイギリス統治期に盛んに活動し、現在もその子孫らが定住していることが知られている。また、昨年度にイギリスで実施した文献調査によると、現在も植民地期に造営された商家建築が少なからず現存しているとみられるが、それらを悉皆調査しまとめた資料は現時点では存在しないため、本研究課題のフィールドワーク成果を研究課題終了後に基礎資料としてまとめて刊行することを視野に入れている。
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Causes of Carryover |
当初計画におけるフィールドワーク実施予定地を変更し、ミャンマーにおいて初年度のフィールドワークを実施した結果、現地活動費等の合計金額が予定よりも低額の結果となったことにより、使用残額が生じる結果となった。
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