2018 Fiscal Year Research-status Report
Modernity and Nationalism in the Murals of Merchant Houses in Colonial India
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17K13359
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
豊山 亜希 近畿大学, 国際学部, 准教授 (40511671)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インド / スリランカ / 商家建築 / 和製マジョリカタイル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、植民地インドの商家建築における壁面装飾のなかでも、日本製の装飾タイル、通称マジョリカタイルが用いられた事実に焦点を当て、マジョリカタイルがインドおよび南アジア地域、さらには商家建築の施主である商人コミュニティが進出した東アフリカ、東南アジアにおいて、どのように受容されているのかを文献調査とフィールドワークから明らかにすることを目的として、研究を進めた。今年度のフィールドワークは、平成30年8月下旬から9月初旬にかけて訪問したスリランカと、平成31年2月下旬から3月上旬にかけて訪問したインドの2カ所で実施した。スリランカには、インド南部タミル・ナードゥ州出身の商業コミュニティであるチェッティヤールが進出したことが知られ、彼らの拠点となった最大都市コロンボの居住区のヒンドゥー教寺院には、ほぼ例外なく日本製のマジョリカタイルが張られていることが判明した。それに加えて、スリランカでは、イギリス統治期の考古学調査を契機として現地の人々によって復興された仏教寺院においても、マジョリカタイルが床の装飾材として使用されていることが明らかとなった。さらに、インド西部グジャラート州カッチ地方で実施したフィールドワークにおいては、東アフリカのザンジバルや中東のオマーンに進出した複数の商業コミュニティの邸宅建築から、やはり日本製マジョリカタイルの存在が明らかとなった。近年、長崎大学の増田研准教授によって、ザンジバルのインド墓地からも日本製マジョリカタイルの発見が報告されていることと関連して、彼らが出身地と移住先をどのように移動して移民社会を構築したのかを明らかにする物的証拠を今年度の調査で得ることが出来た。調査成果は、INAXライブミュージアムの企画展『和製マジョリカタイル』において公開し、研究の社会的還元を行うことができた年度でもあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
執行年度2年間を経過して、インド、ミャンマー、スリランカにおけるフィールドワークを順調に実行してその成果を学会発表や論文執筆において公開できていることを踏まえて、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断する。ただ、当初の研究計画において、フィールドワーク先としていたパキスタンについては、平成30年度内に訪問予定であったが、インドとパキスタンの関係悪化による航空便の運行停止が発生しており、実施できていない。それ以外の国におけるフィールドワークが順調に実施できているため、課題全体の進捗状況として遅れているとは思わないが、パキスタンが重要なフィールドワーク先であることには変わりないため、本研究課題の完了までに調査を実施したいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の遂行最終年度となる平成31年度は、過去2年間で実施してきた文献調査とフィールドワークの成果と課題を踏まえて、補完的に実施すべきフィールドワークの実施計画を策定する。それと並行して、課題全体の成果公表として関連学会における研究発表を実施したうえで、成果をまとめた単著の執筆準備をはじめることを目指す。また、本研究課題においてはインドとインド系商人の進出先に焦点を当てて商家建築の様式的変遷を考察してきたが、インド系商人が進出した国・地域の建築との関連性についてもより詳細な分析が必要であることが課題として浮上してきた。例えば、東南アジアにおいては、中国系とマレー系の混血商業集団であるプラナカンの邸宅建築、東アフリカにおいては木材を使用した独自の商家建築などが、インド国内の商家建築に影響を与えたとみられる事例が少なくないことが判明した。これらの課題については、本研究課題完了後に、新たな研究課題として研究計画を策定する必要があるが、少なくとも本研究課題において、その事例を可能な限り抽出し、実態把握に努めるところまで達成したい。
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Causes of Carryover |
平成30年度3月に実施したイギリスにおける文献調査の旅費について、平成30年度の残額が調査行程をすべてカバーするには不足していたため、次年度使用額として繰り越し、次年度の交付予定額と合算して使用するほうが適正と判断したため、次年度使用額が発生することとなった。上述したとおり、次年度使用額へ繰り越した金額は、平成30年度中に実施したイギリスの調査旅費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)