2017 Fiscal Year Research-status Report
A Comprehensive Reconstitution of Early Mount Fuji Cloud Films - From the Heritage of Meteorologist Masanao Abe
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17K13364
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
Osawa Kei 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (80571231)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 科学映画 / 気象学映像 / 阿部正直 / 雲 / 富士山 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年9月まで、阿部正直が残したフィルムを全品調査した結果、以下のものが見つかった。①ID付き雲観測映像(35ミリフィルム305点)②ID付き雲観測映像の映写用複製(35ミリフィルム438点)③未編集雲観測映像および実験映像(35ミリフィルム178点、16ミリフィルム21点、17.5ミリフィルム9点)④編集済み科学教育映画(35ミリフィルム3点、16ミリフィルム3点)。①および②のうち、多くのフィルムにID番号が附されていたため、写真データと照合して特定することが可能であったが、③の多くはラベルが欠落していたため、一部しか特定できなかった。この調査をもとに、データベースの基本情報となるリストを作成した。 フィルム全点をクリーニングおよび修復した。サビなどで再生不可能のものは10点以下に留まり、コレクション全体の保存状態は悪くなかった。調査をもとに全品を試写し、①の全品および③のうち約50点をデジタル化した。クリーニング・修復・デジタル化作業は平成30年2月に完了した。 同時に、阿部正直が使用した撮影機器を調査した。どの機器でどの映像が撮影されたか、具体的に調べることが目的であった。東京大学総合研究博物館に寄贈されたカメラのうち、35ミリフィルムに対応する機器はドイツ製高速撮影機1台のみである。一方、阿部正直資料の一部が寄贈された御殿場市コレクションを調査した結果、阿部正直が使用したカメラが現存していないことが判明した。①の映像を分析した結果、フィルムの大半が、阿部正直が残した写真資料にも写っている「セプトカメラ」で撮影されたことが分かったがそのカメラ自体は見つからなかった。 一方、平成29年10月から翌2月までドイツのニュルンベルク新美術館において特別展示が開催され、その一環として阿部正直の雲映像を再編集し、立体的に投影した映像インスタレーション「CLOUD BOX」を企画した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は当初の計画以上に進展している。当初はフィルムを約50本デジタル化する予定であった。しかし、個別にデジタル化するのではなく、シリーズごとにまとめてデジタル化することによってコストを抑えたため、予定していたもののほか、阿部正直の雲研究の基礎となった①雲観測映像を全点デジタル化した。また、フィルム全点を試写したことによって、コレクションの内容を網羅することができた。 デジタル化したフィルムのうち、雲映像以外にも歴史的に重要なフィルムが発見された。阿部正直が全天写真で雲を撮影した際に、同じレンズを使用して映像も撮っていたことが分かった。この「全天映像」のほか、風洞実験で煙の流れや指標の動きを記録した映像も数点見つかった。一方、データベースに必要なIDや基本情報が附されていないフィルムが予定以上に多かったため、③未編集雲観測映像および実験映像の一部を同定できなかった。 当初、御殿場市所蔵の阿部正直コレクションを調査する予定であったが、先方から提供された目録から、映像撮影機器がコレクションに含まれていないことが分かったため、出張を見送った。阿部正直が使用したフィルム撮影機器が思いのほか現存しないため、今後、調査の範囲を広げて継続する必要がある。 予定より早く研究成果を一般公開する機会を与えられた。前述の特別展示において阿部正直の雲映像を網羅的に紹介し、その展示図録に阿部正直の雲映像の概要を紹介する論文を掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実施した調査の結果、新たな映像が見つかり、その同定を引き続き進める必要が生じた。これは、最終年度に一般公開する「ABE CLOUD DATABASE」に反映させるものである。また、現存の撮影機器が少ないため、他機関においても阿部正直が使用したものがないか、継続して調査する。 上記二点を除くと、今後の研究は計画通りに実施する予定である。平成30年度の主な課題は阿部正直の映像技術開発の総括である「立体動画上映装置」のデジタル復元であり、これに向けて9月までに設計図を完成させ、年末までに復元実験を行う。この実験に向けて、阿部正直が撮影した立体動画がどのくらい現存するか、調査する。初年度に同定したフィルムのうち、どの映像が対をなすか、阿部正直のデータシートおよび撮影日記と照合しながら、分析する。 最終年度のシンポジウムに向けた準備も進める。予定通り、6月にベルリンのドイツ・フィルム・ミュージアムおよびパリのフランス・シネマテークで調査を行い、ベルリンおよびパリで研究協力者と企画会議を実施する。
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Causes of Carryover |
初年度に御殿場市所蔵の阿部正直コレクションを予定していたが、目録調査からフィルム撮影機器がコレクションに含まれていないことが判明したため、出張を見送った。この次年度使用額は、平成30年6月に予定しているドイツおよびフランス出張に充てる。
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