2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13367
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松田 愛 富山大学, 芸術文化学部, 講師 (40722260)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 現代美術 / 美術史 / 写真 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスの現代美術作家ソフィ・カル(1953年、パリ生まれ)は、写真とテクストを組み合わせた自伝的作品を発表している。自らの個人的な体験から出発しながら、他者との距離やコミュニケーションについて、また、存在と不在、見えるものと見えないものの関係など、根源的で普遍的なテーマを追求している。 本研究は、彼女の芸術表現について、初期作品を中心に、写真とテクストの関係性、また、《眠る人々》(1979)のように、個人的関心から出発し、芸術作品へと展開していく作品生成のプロセスに焦点をあて、考察する。この二つの問いを、同時代の芸術動向との関わりや、作品の制作状況を分析しながら掘り下げることで、カルの芸術表現の意義について明らかにする。 初年度は(1)先行研究の分析・検討を進めるとともに、(2)彼女の最新の活動も視野に入れつつ、初期作品を主な対象として、作品の変遷過程を読み解くことを目指した。(1)については、論考やインタビュー集、批評などを整理し、研究史・批評史の全体を把握し、問題点を探る作業を進めている。(2)に関しては、サンフランシスコのFort Mason Center for Arts & Cultureで行われた個展、同時期に市内のFraenkelLABで開催された最新作を含む個展及びバークリー大学美術館で展示された所蔵作品をあわせて実見・調査した(6月)。また、パリ狩猟自然博物館で開催された個展で、初期作品から最新作までを調査した。あわせてブレーメンのパウラ・モーダーゾーン=ベッカー美術館で開催されたグループ展「眠り」に出展された《眠る人々》を実見・調査するとともに、眠りをテーマとする近現代の美術作品に関しても関連資料を収集した(2018年1月)。2017年度は、ソフィ・カルの旧作から新作まで作品を実見しつつ、関連資料を収集し、先行研究の分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していたソフィ・カル氏へのインタビューまで至らなかったため、2018年度の個展にあわせて調査を行いたい。また、《眠る人々》についての論考を執筆予定であったが、調査時期がやや遅くなったため、2018年度にそれらの論考をまとめ、発表したいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、(1)引き続き先行研究の考察を進め、研究ノートを執筆する。(2)に関しては、初期の活動の中でも、その出発点となった作品《眠る人々》に焦点を絞り、本作品がどのようにして生まれたのか、作品生成のプロセスを解明するため、作品の分析と本作品が発表された同時代の美術状況について、作家へのインタビューと資料調査を通じて読み解くことを目指す。それにより、ソフィ・カルの芸術活動における本作品の位置づけと芸術表現としての意義を探る。 また、カルの作品を写真史やコンセプチュアル・アートの歴史の中で読み解きつつ、現代美術史の中での位置づけを探りたいと考える。
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Causes of Carryover |
国外での現地調査(作品調査とインタビュー)および国内調査旅費、購入予定の物品に使用する。
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