2017 Fiscal Year Research-status Report
植民地期朝鮮の公会堂における近代的催事の市民の享受の実態について
Project/Area Number |
17K13368
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
井原 麗奈 静岡大学, 地域創造学環, 准教授 (70728253)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公会堂 / 植民地期朝鮮 / 文化政策 / 文化政治 / 植民地公共性 / 催事 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は植民地期朝鮮の「公会堂」という公的な空間における近代的催事(博覧会・大会・集会・講習会・委員会・懇談会・音楽会・映画会・結婚式・葬式等)に住民がどのように参加し、それらを享受していたのかを解明するものであり、2017年度主に大別して次の2つの点について調査を行った。
①「催事の意義の考察」人はなぜ集まるのか。前近代から人は経済、宗教、政治活動などをきっかけとして集まってはいた。その時に動員力として機能していたのは地縁、血縁である。しかし近代以降、交通網やメディアの発達などにより、人の集まる理由はより複雑化するようになった。公会堂で開催された催事を新聞記事や近年執筆された韓国語論文を中心に調査している。人が集まることへの考察は、換言すれば近代とは何かを読み解くことであり、そこには植民地性も自ずと現れる。木浦での調査中に戦前期に設置され、現存する「青年会館」を発見した。そこでは日本人が中心となって設置した公会堂とはまた別の論理で朝鮮人たち集まっていたことがわかった。名称の違う集会の場も視野に入れつつ、2年目以降も植民地下における朝鮮人の統合と排除の問題に向き合っていきたい。
②「朝鮮半島の大部分の農村地域における実態を解明」公会堂の設置が確認される群山、木浦で現地調査を行った。いずれも日本人の多い開港場という共通点がある。現地へ赴き公会堂の場所や機能を確認した。内陸の農村部の公会堂としては務安郡一老の公会堂跡を訪ねた。演劇「プンバ」の発祥の地として記念碑が建っているため、追跡調査が可能であったが、他の農村部で跡地を調査するのは困難であることがわかった。公会堂のあった場所はいずれも現在は違う建物が建っているが、それらは公会堂の機能の一部を引き継いでいることも明らかになり、それぞれの土地で公会堂がどのように住民に受け入れられ、認識されてきたのかを考察する一助となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象資料である国際日本文化研究センター所蔵の『京城日報』のDVD-R版は、デジタル化された史料であるため、語句検索機能が付随している前提で調査を始めたが、実際資料にあたってみたところ、語句検索機能がついておらず、出版されている復刻版で内容を確認しながら作業をすることとなった。今後の調査の進捗によっては、調査方法と方針を変更する必要性がある。
9月に行われた日本文化政策学会第11回研究大会(札幌)では、企画フォーラム「文化政策史とは何かー近代東アジア文化政策史の視点からー」を立ち上げ「「文化政治」と「文化政策」ー朝鮮史における2つの言葉の用法について」というタイトルで発表し、課題の提起を行った。他の研究者からは研究を推進する上で参考になるアドヴァイスや意見が得られた。
本研究の当該地域の史料ではないが、調査途中で北海道旧小樽区の公会堂の「使用決裁簿」を見つけたため、史料紹介として日本アートマネジメント学会の学会誌である『アートマネジメント研究』に投稿した。解明した内容を本研究を推進する上で、参照していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
『京城日報』のDVD-R版に語句検索機能がないという上記理由により、当初の網羅的な調査の継続に困難が生じている。今後の調査の進捗によっては、調査方法と方針を変更する必要性がある。場合によっては、植民地期全体に目を向ける方針はそのまま継続しつつ、10年代、20年代、30年代、40年代と時期区分を設けながら、特徴を掴むような調査方針に変更する予定である。
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Research Products
(2 results)