2019 Fiscal Year Research-status Report
植民地期朝鮮の公会堂における近代的催事の市民の享受の実態について
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17K13368
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
井原 麗奈 静岡大学, 地域創造学環, 准教授 (70728253)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 公会堂 / 植民地期朝鮮 / 文化政策 / 文化政治 / 植民地公共性 / 催事 / 樺太 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は植民地期朝鮮の「公会堂」という公的な空間における近代的催事(博覧会・大会・集会・講習会・委員会・懇談会・音楽会・映画会・結婚式・葬式等)に住民がどのように参加し、それらを享受していたのかを解明するものであり、2019年度の調査は大別して以下の3点である。
①「朝鮮半島の主要都市の公会堂における催事の内容と数の分析」仁川、大邱、釜山、新義州、平壌、群山、木浦、春川の公会堂における催事の東亜日報をはじめとする新聞記事を翻訳し、内容別に表にした。 ②「「文化政策」と「社会事業」の関連について」初年度に学会で発表した「文化政治」と「文化政策」という二つの言葉の分析を改めて進めた。他の研究成果も多く発表されたため、「社会事業」という視点を加えた上で、改めて整理して学会発表を行った。そこでさらに調査・分析すべき事柄(集会場所における取締規則の変遷/公会堂の使用条例に関する調査)について助言を得た。 ③「北海道及び旧樺太における公会堂の実態調査」国際情勢のさらなる悪化により朝鮮半島への渡航がより困難になったため、北海道と日本時代の旧南樺太地域(豊原、本斗、真岡、大泊の4都市)における公会堂の調査を行った。北海道を「内国植民地」と捉えるなら、その事例は皇族の行啓も含め、最も成功した植民地における文化政策(特に札幌の「豊平館」の変遷)として参照することができる。また同時代の海外の日本の支配地域でも、気候・風土や現地住民の民族構成の割合の違いなどから、公会堂に表出する事情も異なる。樺太との比較検討から朝鮮半島の特徴をより明確にすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1000件を超える新聞の解析は翻訳スタッフの助力を得て大きく進めることができた。また関連する他の研究成果が近年多数発表されたことにより、植民地における「文化政策」を「社会事業」の一環として再度捉え直す視点を得た。植民地の公会堂で行われた催事の意味と動員の過程を解明するための手がかりとして重要な気づきであった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度研究実績の概要における①について、それらを都市毎にグラフ化して比較を試み、それぞれの都市にどのような特徴があるのかを検討する。②については社会事業との関連をより明確にすること、集会場所における取締規則の変遷を日本「内地」と台湾と比較すること、公会堂の使用条例に関する調査など課題は多い。順に取り組み、学会発表、論文投稿、HPにおける調査内容の発表等を試みる。
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Causes of Carryover |
調査先を変更して調査を行ったが、予想していたほど旅費がかからなかったため。また最終的な調査内容をWebや印刷物等で報告する予定にしているが、調査が終了していないため、それらにかかる経費を次年度に留保した。
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Research Products
(2 results)