2020 Fiscal Year Research-status Report
植民地期朝鮮の公会堂における近代的催事の市民の享受の実態について
Project/Area Number |
17K13368
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
井原 麗奈 静岡大学, 地域創造学環, 准教授 (70728253)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公会堂 / 植民地期朝鮮 / 文化政策 / 文化政治 / 植民地公共性 / 催事 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は植民地期朝鮮の「公会堂」という公的な空間における近代的催事(博覧会・大会・集会・講習会・委員会・懇談会・音楽会・映画会・結婚式・葬式等)に住民がどのように参加し、それらを享受していたのかを解明するものであり、2020年度の調査は大別して以下の2点である。
①「朝鮮半島の主要都市の公会堂における催事の内容と数の分析」仁川、大邱、釜山、新義州、平壌、群山、木浦、春川の公会堂における催事の東亜日報をはじめとする新聞記事を翻訳し、内容別に表にしたものを、都市毎にグラフ化して比較を試み、それぞれの都市にどのような特徴があるのかを検討した。
②「「文化政策」と「社会事業」の関連について」初年度・前年度に学会で発表した「文化政治」と「文化政策」という二つの言葉の違いについての解明を進めた。他の研究成果も多く発表されたため、それらを参考にしながら「社会事業」という視点を加えた上で原稿としてまとめた。特に「文化政策」という言葉を使用しながら執筆された当時の雑誌等のエッセイ記事、植民地期朝鮮の公会堂の使用条例などの一次資料が見つかったことが、このテーマの理解を大きく進めることになった。得られた資料の分析を行う中で、留意したのは植民地朝鮮で行われた「文化政策」は朝鮮総督府にとって「対外政策」だったのか「対内政策」だったのか、という点である。朝鮮総督府が文化と政治をどのように結びつけようとしたのかを考察しながら「公会堂」に対して行われた施策の位置付けを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの影響で調査の進まない部分もあったが、ネット上でデジタルの資料や新聞記事の検索をする、周辺の先行研究・文献を読むなど、可能な範囲内で調査を進めた。前年度の作業により「文化政策」を「社会事業」の一環として再度捉え直す視点を得ることができたため、その視点を以って植民地の公会堂で行われた催事の意味と動員の過程を解明すべく言語化に努めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の目標だった「集会場所における取締規則の変遷を日本「内地」と台湾と比較すること」がまだできていないため、この課題に取り組む。また2020年度実績の①と②で検討している内容が個別の作業として進めているため、最終的には双方を照らし合わせながらまとめ、学会発表、論文投稿、HPにおける調査内容の発表等を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で移動ができず、旅費が使えなかったため。また最終的な調査内容をWebや印刷物等で報告する予定にしているが、調査が終了していないため、それらにかかる経費を次年度に留保した。
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