2017 Fiscal Year Research-status Report
大衆文化における映画製作所「P・C・L」とそのテクノロジーと撮影制度の歴史的機能
Project/Area Number |
17K13372
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
ヨハン ノルドストロム 都留文科大学, 文学部, 講師 (00794322)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本映画史 / 映画製作 / トーキー映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前日本初のトーキー映画製作所「P・C・L」の、1933年から1938年における歴史的展開をサウンド・テクノロジーとプロデュース制度の観点から捉え、P・C・Lが日本映画界の撮影所制度、いわゆるプロダクション・システムに与えた影響力を考察するものである。サウンド・テクノロジーとプロデュース制度を課題に選定した理由は、主に以下の二点である。第一に、1930年代におけるサウンド・テクノロジーの普及が、映画製作に大変革を起こしたという点である。第二に、サウンド・テクノロジーが生み出したトーキーは、大量生産による経済と消費社会において、既存の伝統や価値を覆す新進の文化産業であったという点である。P・C・Lのテクノロジーとプロデュース制度の関連性を思考することは、日本の大衆文化の特性を解明しうる重要な研究であると考えられる。 初年度の平成29年度は、国内外の機関が所蔵するP・C・Lのサウンド・テクノロジーとプロデュース制度に関する資料の実地調査にもとづく、データの収集を中心に研究をおこなった。なおP・C・Lについては、首都圏および関西圏以外の機関について、初年度中に所蔵状況を調査の上で、その重要性を選定し、次年度に本格的な調査を実施した。 平成30年の間に海外国際会議(カナダのSCMS国際会議とイギリスのKineclub国際会議)に本研究について発表した上に、応募者が、これまでキュレイターとして関わってきた、ボローニャ国際映画祭に本研究の成果に基づくP・C・Lの映画作品のプログラミングをおこなった。これによって、本研究の成果を国際的に発信し、日本映画の最新の研究成果が共有されることが期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は順序に進める。本研究の具体的な工夫は、P・C・Lのテクノロジーとプロデュース制度に関するノンフィルムマテリアルを、スキャナ等の撮影によつて、できる限りデジタル映像として確保し、構築したデータベースに組み込むことにある。前年度に選定した機関におけるP・C・Lのサウンド・テクノロジーと映画製作制度に関する資料の総合的な調査と、補充データの収集に重点をおいて研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、前年度に選定した機関におけるP・C・Lの総合的な調査と、サウンド・テクノロジーとプロデュース制度に関する資料の継続調査、補充データの収集に重点をおいて研究を進める。 平成31年度になると前年度までの二年間で収集したデータを多面的に分析し、研究として成果を集大成する。これまで構築してきたデータベースを用いて、P・C・Lのテクノロジーとプロデュース制度の関連性を考察する。なお適宜、不足するデータについては、実地調査等をおこない、データの拡充や整備を図る。またP・C・Lに関するデータベースについては、所蔵機関の許諾を得た上で、応募者が構築に参画している公立大学法人都留文科大学の図書館のデジタル・コレクションへの統合を図り、webで一般に公開する。なお本研究の成果は、各年度に適宜、『映像学』『演劇研究』等の学会誌や、日本映像学会等の関連学会で発表する。または、国際的な研究成果の発信として、SCMS(映画メディア学会)等の国際学会で口頭発表をおこない、『Film History』等の国際誌に論文を投稿する。 研究者が、これまでキュレイターとして関わってきた、ボローニャ国際映画祭、ポルデノーネ国際映画祭等、映画フィルムの保存研究に係る国際映画祭において、本研究の成果に基づくP・C・Lの映画作品のプログラミングをおこなう。これによって、本研究の成果を国際的に発信し、日本映画の最新の研究成果が共有されることが期待される。
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Causes of Carryover |
平成29年度の海外出張に置いて、当初見込んでいた額より安価で行うことが出来たので残額が発生した。 翌年度に研究が順調に遂行できるよう利用していく予定である。
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