2018 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on War Dramas of Kabuki in Meiji Era - With A Focus on Satsuma Rebellion -
Project/Area Number |
17K13375
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
埋忠 美沙 早稲田大学, 文学学術院, 講師(任期付) (20468846)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 西南戦争劇 / 明治維新劇 / 歌舞伎 / 新派 / 西郷隆盛 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年から継続し歌舞伎および新派等の演劇における西南戦争の描写を調査分析するととともに、新たに西郷隆盛の造形について「明治維新」の作品も対象とし、調査分析をおこなった。そのうえで研究の総括として、2年間で扱った作品を演劇史に位置付けた。具体的に調査分析おこなったテーマと作品は以下の4つである。①西郷が歌舞伎に初登場(明治7年「近世開港魁」)、②西南戦争劇の流行(明治11年「西南雲晴朝東風」「西南夢物語」他多数)、③高安月郊作「江戸城明渡」(明治36年)、④岡本綺堂の西南戦争劇(大正11年「西南戦争聞書」「城山の月」)。 本研究の主軸である②西南戦争劇の流行については以下の結果が得られた。A:時事性が強く新聞種と強調。B:スペクタクルの程度は作品により異なるが戦争を前面に打ち出した構成。ほぼ全作に出征の場面がある。C:役作りに軍服の着こなしを重視。D:軍人らしさの表現として漢語を使用、方言は一般的ではない。総括すると写実であることが重視され、歌舞伎は報道メディアとしての役割を果たしていた。以後は約20年間に旧作新作合わせて10回程度小芝居で上演されたのみで、西南戦争物は「キワモノ」らしい上演史を辿った。 上記の調査結果を踏まえ研究の二つ目の軸として、演劇における西郷の描写を調査分析した。「キワモノ」としての西南戦争劇は明治30年代半ばに断絶し、上記③④の西郷の描写は①②とは大きく異なっており、その理由として上野の銅像(明治31年12月竣工)の影響を見いだせた。すなわち明治初年から受け継がれた西郷の造形が銅像完成後は通用しなくなったためで、強力な視覚イメージが演劇にもたらされ、以後異なる役作りが必要となったことが明らかになった。 西南戦争劇の詳細、および現在に受け継がれる西郷の造形が確立する経緯が詳らかになり、西南戦争劇の研究に止まらぬ成果が得られた。
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