2017 Fiscal Year Research-status Report
イタリアオペラ作品における実践的な楽譜・台本解釈法と発語法の新しい体系化
Project/Area Number |
17K13377
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Research Institution | Nagoya College of Music |
Principal Investigator |
森 雅史 名古屋音楽大学, 音楽学部, 講師(移行) (50767663)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イタリア・オペラ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、本研究の基盤となる資料である、Zanichelli社から出版されているイタリア語発音専門辞書「Il dipi.Dizionario di Pronuncia Italiana」、EDT社より出版されているオペラ台本における韻律について取り扱った書籍「Paolo Fabbri著:Metro e Canto nell’opera Italiana」、Saggi. Tascabelli社より出版されているオペラ作曲家別の楽譜解釈法の最新の研究成果を発表した書籍「Philipp Gosett著:Dive e maestri」この3冊の翻訳を進めた。 特に、イタリア語発音専門辞書である「Il dipi.Dizionario di Pronuncia Italiana」の序文ならびに発音法解説を訳したことから得た具体的な発音に関するアプローチは大変貴重で、翻訳した内容を海外で活躍するイタリア人歌手や指導者達を対象に裏付けと確認を取ることが出来た。その結果、実際には彼らが辞書の内容以上に、より実践的に、発語の知識や詩のリズムを駆使して舞台表現に活かしていることが、彼らの指導や舞台での歌唱、直接のインタビューを通じて理解できた。演奏現場や指導現場でこうした知識を持ち込むことで大きな成果が既に出ている。 文献探索に短期研修でミラノを訪れたが、出版社の多くが倒産していた。縁あって音楽専門の古書店を紹介してもらい「Ildebrando Pizzetti著「Bellini」、Antonio Cassi Ramelli著「Libretti e Lbrettisti」、Gloria Staffieri著「L'opera italiana」の他ロッシーニ書簡集など大変貴重な文献も入手することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究に関する科研費を申請してから、全国共同制作プロジェクトオペラ「トスカ」への出演が決まるなど、歌手として演奏依頼が多く入ったことで演奏活動が忙しくなり、またオペラという芸術の特性上、稽古期間や拘束期間が長く、当初計画していた進度より、研究速度が遅れているのが現状である。演奏活動自体も研究活動となるため、本研究とどのように並行して進めていくかが課題である。 海外短期研修では、ミラノとボローニャを中心に演奏家や役者、指導者たちと活発に意見を交わす機会を得ることができたと同時に、貴重な資料を得ることも出来た。 本研究の3本柱である日本人のための「歌唱におけるイタリア語発語法」、「イタリア詩の韻律解釈を踏まえたのオペラ台本読解法」に関しては比較的順調で、書籍の翻訳を含め、実際の演奏現場や指導現場で一定の成果に結びつけられている。 一方「イタリア・オペラ作品における楽譜・演奏解釈法」に関してだが、資料集めに躓いているところがあり、イタリアを中心とした図書館や音楽院での資料収集と考察にもっと時間を割く必要を感じており、進捗状況が遅れているのがこの分野の研究である。非常に幅広い分野であるため、入手できる資料を精査しながら、的を絞った研究に移行して行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究は、平成29年度に引き続き、本研究の基盤資料である①「Il dipi.Dizionario di Pronuncia Italiana」、②「Paolo Fabbri著:Metro e Canto nell’opera Italiana」、③「Philipp Gosett著:Dive e maestri」の翻訳と翻訳の終了したものから改訂を進める。翻訳の終了した上記の資料と、平成29年度の渡伊の際に収集した資料文献の翻訳と調査を進め、より具体的で実践的な「歌唱におけるイタリア語発語法」、「イタリア詩の韻律解釈を踏まえたのオペラ台本読解法」の2点を踏まえた、日本人のためのイタリア歌唱芸術おける実践的な文献の完成を目指す。 当初の予定を変更して、平成30年5月後半より2週間の予定でイタリア・ボローニャ、ヴェネツィア、フィレンツェを巡り、国立音楽博物館や国立中央図書館などで資料の閲覧と発掘に取り組む予定である。これは「イタリア・オペラ作品における楽譜・演奏法解釈」に関しての研究資料収集が滞っているため、資料収集と直筆譜や書簡などの原本を閲覧することを目的としている。また、ひとくちにイタリアオペラ作品といっても大変多くの作品があり、時代や作曲家によって様式も違うため、そうした作曲家や作品の見極めにも時間を費やすことになるかと思う。Vincenzo Righiniに代表される、現在は知名度は低くとも、作曲当時は大変人気が高く後世への影響があったであろう作曲家に関しても是非焦点を当てて調べたいが、慎重に選出を進めて行きたい。
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Causes of Carryover |
イタリア研修時に多く見積もっていた、研究関連書籍、楽譜が重い通りにはかどらず、収集がかかる費用が予想を下回ったことと、海外研修費用に伴う旅費や謝礼金が低く抑えられたことが理由として挙げられる。次年度に持ち越した研究費は30年度海外研修の際の楽譜や書籍、音源といった研究資料購入にしようしたいと考える。
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