2018 Fiscal Year Research-status Report
イタリアオペラ作品における実践的な楽譜・台本解釈法と発語法の新しい体系化
Project/Area Number |
17K13377
|
Research Institution | Nagoya College of Music |
Principal Investigator |
森 雅史 名古屋音楽大学, 音楽学部, 准教授 (50767663)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | イタリアオペラ / ボローニャ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究としては、昨年度購入したイタリア語における文献の翻訳と内容の確認を継続するとともに、5月には渡伊し、ボローニャを拠点に、ボローニャ歌劇場のリハーサルにも立ち合い、出演歌手(演目はVerdi作曲『ドン・カルロ』)や現地在住の国際的に活躍するオペラ歌手陣と歌唱旋律の扱い方や、読譜法と演奏様式の関連について討論を重ねた。また、ボローニャ音楽院で音楽史を指導している著名な音楽学者ピエロ・ミオーリ氏からも直接対談し、意見やアドバイスをもらう機会を得ることが出来た。ミオーリ氏の著書数冊の他、Alfredo colombani著『19世紀のイタリアオペラ(1900年著)』やAlessandoro Rocatagliati著『台本作家Felicce Romani』など、これまで探し求めていた書籍を購入することもできた。また、イタリア国立ボローニャ音楽博物館では、研究対象でありながら関係書物の少ないボローニャ派の作曲家Vincenzo Righiniの直筆譜のコピーやその他作曲家の直筆譜、手紙などを研究ということで特別に3日間に渡り見せてもらった。研究内容の裏付けとしての実演・演奏活動しては、Verdhi作曲『リゴレット』やMozart作曲『フィガロの結婚』といった研究対象のオペラにも出演しつつ、イタリアオペラ作品の歴史を追ったプログラムによるリサイタルも名古屋と富山で開催した。リサイタルの内容としては、先述したRighini作曲のオペラアリアなど、おそらく日本初演であろう作品も取り上げながら、国際的に活躍するイタリア人バリトン歌手Mattia Olivieri氏の協力を得て、Rossini,Donizetti,Bellini,Verdi,のオペラ作品における二重唱を取り上げた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究に必要なイタリア語や英語による参考文献の翻訳に時間がかかるにも関わらず、演奏活動と並行することが難しく、またオペラという芸術の特性上、稽古期間や拘束期間が長く、当初計画していた進度より、研究速度が遅れているのが現状である。昨年度同様、演奏活動自体 も研究活動となるため、本研究とどのように並行して進めていくかが課題である。 海外短期研修では、昨年と同じくボローニャを中心に演奏家や役者、指導者たちと活発に意見を交わす機会を得ることができたと同時に、今年度は、ボローニャ国立音楽院で教鞭をとる音楽学者ピエロ・ミエ―リ氏と会談ができ、多くの新資料と提示やアドバイスを受けたが、それらの翻訳と内容の精査にも時間が必要となっている。本研究の3本柱である日本人のための「歌唱におけるイタリア語発語法」、「イタリア詩の韻律解釈を踏まえたのオペラ台本読解法」、「イタリア・オペラ作品における楽譜・演奏解釈法」に関しての研究の連携は比較的順調 で、指導におけるある程度の体系化も具体的に仕上がりつつあると同時に、イタリアオペアの歴史を追ったプログラムによるリサイタルを実現させることも出来、実演を通じて研究内容の成果を発表することが出来た。しかしながら「イタリア・オペラ作品における楽譜・演奏解釈法」に関してだが、昨年同様、現地でしか得られない資料の獲得や、知識を有する演奏家や学者との対談、イタリアを中心とした図書館や音楽院での資料 収集と考察にもっと時間を割く必要を感じており、特に進捗状況が遅れているのがこの分野の研究である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年は、これまで購入してきた外国語の文献の翻訳と内容の確認を中心に、これまで精査した研究内容の充実と論文作成を進める。また、6月に来日するボローニャ歌劇場のソリストとの対談を通じて、研究内容の裏付けも進めたい。伝統的な歌唱旋律解釈法研究の為、文献の内容の裏付けとして1900年初頭のSP録音との表現法や歌唱技術に関して照合を行う。蓄音機ならびにSP録音に関して造詣の深い、梅田秀喜さんにも協力をいただく予定である。
|
Causes of Carryover |
イタリア研修時に多く見積もっていた、滞在期間が大幅に短縮されたことと、資料収集がかかる費用が予想を下回ったことなどにより、海外研修費用に伴う旅費や謝 礼金が低く抑えられたことが大きな理由として挙げられる。 次年度に持ち越した研究費は31年度予定になかった海外研修や取り寄せ可能な資料収集に用いたいと考える。
|