2019 Fiscal Year Research-status Report
イタリアオペラ作品における実践的な楽譜・台本解釈法と発語法の新しい体系化
Project/Area Number |
17K13377
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Research Institution | Nagoya College of Music |
Principal Investigator |
森 雅史 名古屋音楽大学, 音楽学部, 准教授(移行) (50767663)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イタリアオペラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本件研究は「イタリアオペラ作品における歌唱のための実践的な楽譜・台本解釈法と発語法の新しい体系化」を目的としている。該当年度である2019年度は、あいちトリエンナーレで採択された舞台芸術作品公募プログラムである「シェイクスピア変奏曲」の上演に際し、ヴェルディ作曲オペラ『マクベス』『ファルスタッフ』の発語指導を担当する過程で、研究の成果である体系化された発語法の実践的証明を試みる機会を得られた。特にオーケストラ伴奏で、イタリア語を母国語としない学生を対象としながら、重唱やソロ、合唱曲に至る幅広い演奏様式で、日本人の為の舞台発語法や楽曲解釈研究について取り組めたことは、研究の前進に非常に役立った。また、木下美穂子、清水華澄、両客員准教授をはじめ、国際的にオペラの舞台で活躍する本公演出演者達と本研究内容について議論を重ねられた事も大変有意義であり、様々な角度から舞台発語法の指導法、体系化の可能性を話合う事ができた。 海外研修では、パリで「ドン・カルロ」、ボローニャで「フィデリオ」を観劇するなど、現在のヨーロッパの歌劇場でのオペラ公演に触れるとともに、同地の他ではフィレンツェの古書店で18世紀・19世紀の関係文献を購入し、各地で歌手や器楽奏者たちと研究に関する議論をすることができた。特筆すべき研修内容として、ボローニャ・アカデミア・フィラルモニカ内にある図書室で様々な資料に触れる事が出来たことを挙げておきたい。モーツァルトやロッシーニなど、本研究に対象となる作曲家達の直筆譜や手紙など、貴重な資料を研究員による説明を踏まえて閲覧することが出来たとともに、現在修復中、確認中の多くの貴重な歴史的資料に触れる事ができた。 また、SPレコード資料から演奏技法や発語に関する裏付けの確認を、専門家である梅田英喜さんの協力を得て取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大学行政に携わる割合が、当初よりも増えたこともあり、研究自体に時間を割くことが難しくなっている。また、研究課題を私自身のオペラ公演出演を通して実践的に体系化したいという、当初の計画が、既出の理由がもとで出演を断らなければならなくなり、オペラ公演の現場で、指揮者や共演者たちとの議論、実践を通じての裏付けを取る場所が無くなっている。特に、コレペティトゥアとの稽古ならびに対談や、ボローニャ大学で進んでいるオペラにおける『台本解釈学』について積極的に調査を進めたいが、そちらも滞ってしまっている。演奏解釈法に関しては、ロッシーニにおける演奏法についてゼッダ氏の著作を翻訳するなど進めているが、翻訳までに時間を費やせず、こちらも進度は遅くなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新国立劇場オペラ研修所常任コレペティトゥアである岩渕慶子女史の協力を得ながら、体系的な発語法の構築を進めていく予定である。イタリアオペラにおける演奏法とすると幅広くなりすぎる為、ロッシーニを中心にその演奏解釈法についての考察を進め、コロナウィルスの影響から、来日する演奏家たちとの交流や海外研修が難しくなるが、Webで様々な演奏家や歌手達との議論を進めて行きたいと考えている。 また、CD化されていない様々なSPレコードによる演奏技法や発語法について考察を深める事が、かつての演奏解釈についての裏付けとしての、ひとつの要因となることから、積極的にこちらの研究も進めて行きたい。
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Causes of Carryover |
研究協力者に予定していた、先生方がご高齢の為、予定していた協力を得られず謝礼が発生しなかったことと、予定していた物品代が安価に済んだことが理由として挙げられる。 謝礼に予定していた金額を用いて、Spレコード等の録音資料や国内で流通している文献の購入費に用いたいと考えている。
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