2017 Fiscal Year Research-status Report
The Relationship between Buhen-banashi-Stories and Samurai in the Edo Period
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17K13382
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
森 暁子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 基幹研究院研究員 (50705788)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 武辺咄 / 兵学者(軍学者) / 武田流兵法 / 甲州流兵法 / 武家文化 / 軍書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は3つの柱から成る。 まず、今年度の中心たる【研究A】「兵学創始者による武辺咄作成」に関しては、重要な2つの作品について、平成30年度に論文化すべく、資料収集と翻刻を進めた。金沢市立玉川図書館近世史料館、金沢大学附属図書館の所蔵する本の書誌調査と撮影を行い、国立国会図書館、国立公文書館のネット上で公開されている画像の情報と併せて、作品のうち1つについては一通り翻刻を終えている。大部のもう1つについては、現在翻刻を進めている途中である。 【研究B】「兵学者の交流と武辺咄発生の現場」に関しては、対象とする兵学者の著作について、資料収集を進めた。金沢市立玉川図書館近世史料館が所蔵する自筆本については、その撮影を行った(書誌調査と複写は前年度までに済ませておいた)。また別の作品について、同館所蔵の2点の複写と撮影を行い(書誌調査は前年度までに済ませておいた)、さらに4点の端本(一部のみ残存する本)・抜書の書誌調査も追加で行った。加えて、以前に書誌調査と撮影を行った石川県立図書館本を再調査し、撮影ミスの箇所を追加で撮影した。 【研究C】「武辺咄の継承と一般への伝播」に関しては、本来今年度は着手する予定ではなかったが、上記の金沢市立玉川図書館近世史料館での調査の際に、対象とする作品2点の書誌調査のみ、ついでに行うことができた。 以上の成果には、特に【研究A】について、武田流兵学創成期の武辺咄の様相と、作品ごとの特徴を見出した点に意義がある。そして、【研究B・C】で収集した資料からは、武田流兵学の盛んであった雄藩における武辺咄の発生・継承の状況の一端を捉えつつあるが、これは本研究課題が目的とする、武家文化の近世文学への影響力の解明において、非常に重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は【研究A】に関しては作品の翻刻を2つとも済ませ、それぞれの武辺咄の整理まで終える予定だったが、図書(分担執筆)の仕事が「研究発表」〔図書〕の項目に載せたものを含め4件入ったことで時間が取られ、大部の作品1つの翻刻がまだ途中であるため。武辺咄の整理についても完成していない。 なお【研究B】に関しては予定通り進められた上に、追加で端本・抜書類の調査も行うことができた。また今年度着手する予定でなかった【研究C】に関しては、前倒しで作品2点の書誌調査まで行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究A】については大部の作品1つの作業が遅れているが、調査を進める中で、当初推測していたよりも、もう1つの作品との性質の違いが明確に見えてきた。成立年代に少し開きがあり、著者(筆録者)の立場もやや異なると分析している。そのため、2作品を1つの論文で平成30年度に発表する計画を改め、1作品ずつ、2点の論文にまとめることとし、まずは成立が早いと推測される作品について、論文発表を行う予定である。 【研究B】については、予定通り平成29年度に収集した作品の翻刻に入る。同時に、著者の人的関係について、都内に残存する資料で江戸在の人物について調査を行うと共に、金沢で加賀藩関係者の調査を行う予定である。 【研究C】については、すでに書誌調査を済ませた作品2点の撮影と複写を予定通り行い、余力があれば翻刻を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定で、現在古本市場でしか流通していない文献が数点、平成29年度は市場に出なかったため、その分の予算を使い切れなかった。 平成30年度には、以上の文献をできれば購入するつもりであるが、依然として市場に見当たらない場合は国会図書館等で参照することにし、時間のかかることが予測される【研究B】の人的関係の調査のため、出張代に加えることを計画している。
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Remarks |
論文引用実績 高橋圭一氏「『川中島合戦評判』解題」(『京都大学蔵 潁原文庫選集 第六巻』(平成30年3月・臨川書店))に、森暁子「北条氏長『兵法問答』の合戦語り」(「近世文藝」100号、平成26年7月)。
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Research Products
(1 results)