2019 Fiscal Year Research-status Report
賀茂真淵を中心とする、物語文学を対象とする古典注釈学に関する総合的研究
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17K13384
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高野 奈未 日本大学, 文理学部, 准教授 (30646815)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近世文学 / 古典注釈 / 国学 / 賀茂真淵 / 万葉集 / 物語 / 和歌 / 江戸文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究第3年度にあたる今年度は真淵の文事に関する包括的調査を継続するとともに、昨年度までの調査によって判明した関係資料の分析を進めた。そのうち特に以下の研究を行い、成果をとりまとめて発表した。 真淵の最晩年の主著『万葉考』を真淵の業績の集大成とみなし、その訓読・解釈の方法について、中世以来の万葉理解、特に契沖のそれとの比較・検討を行い、真淵学の特徴・意義を浮き彫りにした。その成果の一部を「賀茂真淵の萬葉学」として発表した(第15回若手研究者支援プログラム・同報告書)。真淵は契沖に対し、実証的古典学者の嚆矢としての意義はみとめるもののその学問内容には消極的な評価を下していること、訓読・解釈において契沖は作品の表現内容を評するのに対し、真淵の関心は詠歌の過程・行為に向けられているという前提の違いがあることを明らかにした。 真淵の古典注釈学を研究することの意義について、「古典注釈学と国学―賀茂真淵を中心として―」と題して発表した(令和元年度第2回国学研究プラットフォーム公開レクチャー)。真淵の古典注釈学について、対象となる古典作品に対する読解内容を先行注釈との違いを踏まえ、具体的に検討を重ねることで、真淵の思想とその方法が明らかになることを報告した。思想史研究と文学研究をつなぐ視点として、古典注釈学が有効である可能性を示した。 近世文学の楽しみ方を広く知らせるため、小澤蘆庵について「和歌で傘、和歌ですごろく―『六帖詠草』」、賀茂真淵について「国学者と歌人、研究と実作の間―賀茂真淵の『万葉集』研究」と題する文章をそれぞれ発表した(『奇と妙の江戸文学事典』)。 「江戸の枝直―江戸歌人の東国詠をめぐって―」(『和歌文学大系』月報)として、橘枝直の活動を中心に安永期江戸の和歌における当代性の具体相を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
得られた成果はそれぞれ発表・論文を通じ公表することができたが、当初予定していた積極的な資料調査・データ収集がやや遅れたため。特にコロナウイルス感染症流行のため2020年春に予定していた海外調査を実施できなかったことにともない、データ収集に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の研究計画にしたがって研究を進める。コロナウイルス感染症の状況は予測がつかないため調査をどの程度実施できるかはわからないが、予定している研究を完了できるよう、効率的に研究を進めるようにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた積極的な資料調査・データ収集がやや遅れたため。特にコロナウイルス感染症流行のため2020年春に予定していた海外調査を実施できなかったことの影響が大きい。次年度は計画通り研究を遂行するほか、状況が改善しだい調査を行えるよう準備を進める。
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