2017 Fiscal Year Research-status Report
Japan Reprinted Chinese Books (Wakokubon) in East Asia
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17K13399
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
李 増先 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (90755498)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 和刻本漢籍 / 極東 / 漢字文化圏 / ケンブリッジ大学図書館 / 在外日本古典籍 / ロックハート / デジタルアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はジェームス・スチュワード=ロックハート(ロックハート、1858-1937)卿の自筆目録のデータベース化を試みた。ロックハートは1880年代より約40年間にわたり、当時の英領植民地であった香港や威海衛を管理した人物である。彼が外交官として在任中の間は約800点もの絵画資料、3000点の写真および1200タイトルの書物を蒐集した。その中の書物は彼の没後に遺族によって解体され、現在イギリス国内の複数の研究機関に収蔵された。当時の主な所蔵先としては大英博物館とケンブリッジ大学図書館とがある。 特にケンブリッジ大学図書館に収蔵されたロックハートの旧蔵書には特徴があり、それは和刻本漢籍が多く含まれていることである。周知のように和刻本漢籍とは日本で出版された漢籍のことであるが、旧時の漢字文化圏内においても需要があった。 本研究の研究対象である同大学図書館蔵となったロックハートの旧蔵書は、一部は『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』に掲載されているが、同目録に本研究対象についての記述は誤りがあることは以前の研究(15H06735)によって明らかにされた。しかし、ロックハート旧蔵書全体を概観できなかったのも事実だ、旧蔵書の全体規模や書物構成を復元するに至らなかった。 そこで、報告者は現在スコットランド国立図書館(NLS)にあるロックハート書簡の中から彼自身によって記された旧蔵書のカタログを見出すことができた。書簡の所有者であるスコットランドのジョージ・ワトソンズ学院より許可を取得し、複製を入手することができた。本年度はそのカタログのデジタル化に成功し、公開に向けてメタデータを付与している。 なお、本研究で作成したデジタルアーカイブ画像は、ケンブリッジ大学図書館のリポジトリであるケンブリッジデジタルライブラリー(CUDL)から、一般向けに公開されたことも本研究の言及すべき成果の一つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画通りに研究を進めてきた、研究計画書の年次計画に記載された目標に概ね到達できた。ロックハート自筆旧蔵書のカタログのデジタル化を始め、英文参考資料の収集やデジタルアーカイブの作成などを推進してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
以前の研究では前出目録には本研究対象についての記載に誤りがあったことを指摘した。同目録には本研究対象の購入時期は1937年と記しているが、本来は1937年と1948年との二度にわたって購入されていたことが明らかになった。そのため、研究対象の全体を概観できる資料が必要となり、NLSのロックハート書簡の中からロックハート自筆の目録を見出すことができた。 そして、今後はこの自筆目録を完全にデータベース化し、作品のタイトルや書肆情報等をメタデータとして付与していく方針である。 なお、今年度同様に英文参考資料をイギリス国内のNLSや大英図書館、イギリス国立公文書館から入手し、コレクション成立時の歴史背景を復元する予定である。 さらに、調査過程で作成したデジタルアーカイブを逐次に公開し、成果を学会等で報告するのに加え、CUDL等の媒体からの公開も継続する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の調査でこれまでに知られていないロックハートの関係資料がイギリス国立公文書館に多数存在することを発見した。更にケンブリッジ大学図書館の蔵書の中に、ロックハートコレクション以外、他のいくつかの漢籍コレクションにも和刻本漢籍が含まれていることが明らかになり、今後は巨視的に捉え、関連性を見出す予定である。上記の二点を来年度以降の調査において詳細を追う予定であり、その際に旅費等が必要と見込まれ、次年度使用額として繰り越すことを決定した。
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Research Products
(6 results)