2021 Fiscal Year Research-status Report
シェイクスピア時代の地中海世界とシェイクスピア作品におけるその表象の解明
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17K13404
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
土井 雅之 文教大学, 文学部, 准教授 (00614992)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シェイクスピア / エリザベス朝演劇 / 地中海貿易 / ワイン / ルネサンス期ロンドン / タヴァーン |
Outline of Annual Research Achievements |
地中海世界との交易を経て発展したロンドンの商業、特に宿泊業と飲食業に注目した昨年の研究を発展させて、2021年10月9日(土)第59回シェイクスピア学会(Zoomによるオンライン開催)において、研究発表「文献から探るルネサンス期ロンドンのワインとタヴァーン事情」を行う。 本発表では、最初にワインの輸入量とタヴァーンの店舗数の増加を取り上げた。16世紀半ばにワインの輸入が増えた理由の2つ、1つは貿易ルートの確立、もう1つはロンドンの受け入れ態勢の整備を確認することから始めた。ワインの輸入量が増加したことは、ロンドンでのワインの消費地であるタヴァーンの店舗数も増加したことも意味している。タヴァーンが犯罪の温床となっていること、過度の飲酒をもたらすことが問題視されつつも、ロンドンの消費文化の場として大きな意味を持ったことを論証した。 次にペスト流行の飲食店への影響を考慮した。ペスト流行が飲食店にどれほどの影響を与えたのかを示す一次資料はないが、記録が多く残る1665年の大流行から遡ることで、シェイクスピア時代の対策の不十分な点を確認し、船頭たちの嘆願やトマス・デカーの『驚異の年』からの推測を行った。 最後に『ヘンリー四世』2部作を中心としたタヴァーンの場面について論述した。これらの作品でのタヴァーンの描写が特異なのは、タヴァーンを舞台にする場面をそれぞれの作品から取り出して繋げると、イーストチープにある一軒のタヴァーンの記録ができあがることである。ハルが即位するまでの過程を描く連作劇の合間を使い、「あるタヴァーンの記録」あるいは「タヴァーンの女将一代記」を作成している。それぞれの作品では数えるほどだが、タヴァーンの場面はイベントが盛りだくさんであり、前後の場面とのテンポの違いから印象に残るのである。 研究発表終了後には、一次資料の徹底した調査を評価するコメントをいただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
延長期間を利用し追加の研究を行えたが、新型コロナウイルスの流行の影響でロンドン出張などの予定を終えることができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
状況の変化を見つつ、終えることのできなかったロンドン出張などの予定を行うか、これまでの研究成果をまとめることに集中するかを判断する予定である。
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Causes of Carryover |
状況が落ち着いてきたように思われたため、ロンドン出張などの予定を立てたが、新型コロナウイルス感染症の再流行で実行することができなかったため。 状況が整えば、海外に出張するさいに使用を計画している。海外出張が難しいようであれば、追加の研究での使用(参考文献や関連物品の購入)を計画している。
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