2017 Fiscal Year Research-status Report
The U.S. Southern Exceptionalism and Ex-slave Narratives in the New Deal Era
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17K13410
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山根 亮一 首都大学東京, 人文科学研究科, 助教 (90770032)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ASA / 日本英文学会 / 日本フォークナー協会 / William Gilmore Simms / William Faulkner |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度、私は「アメリカ南部例外主義とニューディール政策下における元奴隷のナラティブ」という課題名のもと、以下の研究を行った。 先ず2017年11月、アメリカのシカゴで開催されたAmerican Studies Association(ASA)の年次大会にて、“William Gilmore Simms as a Node: Social Network of Antebellum Southern Exceptionalism”というタイトルで研究発表を行った。これは、上記課題名のうち、とりわけアメリカ南部例外主義に焦点をあてながら、19世紀の南部作家William Gilmore Simmsを論じたものである。2016年から立ち上げた読書会のメンバーで構成されたパネルで、それぞれの視角からこの地域の例外主義の問題を照射した。国際学会での発表は30年度以降行う予定であったが、読書会メンバーとの議論が予想以上に発展していったため、29年度で実行するに至った。 次に、29年度初頭には日本英文学会の『英文学研究』英文号より、“‘Why Do They Live at All’: On the Southern Pneumatology in Absalom, Absalom!”を出版し、音声中心主義の視点からウィリアム・フォークナーの小説と南部例外主義を論じた。この流れで、日本ウィリアム・フォークナー協会からの依頼で、2017年出版の論集、Faulkner and Print Cultureの書評を執筆した。 29年度の研究はアメリカ南部例外主義研究についてのフレイムワーク、意義付けに費やされた。というのも、このトピックの包括する作家、作品は多岐に渡ることが分かったからだ。今後は、ニューディール政策、そしてその時期の元奴隷のナラティブについてより踏み込んで議論することになろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進展していると述べた理由は、何よりもまず、国際学会での研究発表にまでこぎつけることに成功したからだ。アメリカ研究の最高峰、American Studies Associationでの経験は、今後の研究を方向付けるのに十分なインパクトを持っていた。 さらに、アメリカ南部例外主義の読書会では、多角的アプローチの可能性を探ることに成功した。研究計画の段階では見えてこなった通時的、共時的な問題を取り扱うことで、より元奴隷のナラティブというトピックを深化させることができる。 一方、おおむね、と述べざるを得なかった理由は、19世紀、20世紀の作家たちの研究に労力を割いたぶん、元奴隷のナラティブそれ自体の深い研究にまでは至らなかったからだ。今後は、更にこの研究を推し進めるため、これまで以上に資料収集に邁進する必要を感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策については、以下の二つの方向から考えることとする。 一つ目の方向は、研究計画通り、南部諸州に散らばった元奴隷のナラティブの収集と分析を継続することである。そしてもう一つは、有名な南部作家たちとのかかわりのもとで文献収集等を行っていくと同時に、その作家たちについての議論も深めていくことである。昨年度はWilliam Gilmore Simmsについての研究発表を行ったが、今年度はSimmsとEdgar Allan Poeとの関係について、同トピック(アメリカ南部例外主義)を視座として議論する予定である。その舞台は、今年6月21日から4日間京都で開催される国際学会、International Poe and Hawthorne Conference(の二日目、22日)である。さらに、フォークナーについても、論集での執筆依頼があるので、それを8月(予定)頃に提出する予定となっている。Simms,Faulknerという南部を代表する作家たちの研究をさらに推し進めながら、元奴隷のナラティブの研究をより洗練させていく計画である。 以上は30年度の研究計画であるが、その後も同様に、国際学会での発表や論文投稿を視野に入れつつ、多角的に研究課題に挑む。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が0より大きい理由は、旅費の金額が予想よりも低かったことと、ホームページ作成のためのソフトを購入しなかったことである。前者については、旅行した季節が比較的安価になりやすい冬であったことに起因するが、後者については、30年度の成果を待ってから作成したほうが、より洗練されたものになると考えたからである。6月に参加予定の国際学会での反応をもとに、今年の夏に始動させる予定である。その際、必要であれば2万円程度のホームページ作成ソフトを購入する予定だ。
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