2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Representation of Peru in English Romantic Literature
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17K13413
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
市川 純 日本体育大学, 体育学部, 准教授 (70507970)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 英文学 / ロマン派 / コツェブー / ウィリアムズ / ペルー / スペイン |
Outline of Annual Research Achievements |
3年間の研究計画初年度はドイツの劇作家アウグスト・フォン・コツェブー(August von Kotzebue)の悲劇『ペルーのスペイン人』(Die Spanier in Peru, 1795)の英訳および翻案を取り上げ、そのイギリスでの受容について、歴史的背景を考察した。この劇に登場するスペイン人征服者フランシスコ・ピサロ(Francisco Pizarro)の残虐なイメージは同時代のフランス革命のイメージや、さらにはナポレオンのイメージが投影され、フランスの脅威が垣間見える。また、この劇がイギリスで大人気を博した当時は奴隷制反対運動も高まっており、南米の現地人を蹂躙した残酷なスペインのイメージを共有するものでもあることを論じた。 研究計画2年目に取り上げたヘレン・マライア・ウィリアムズ(Helen Maria Williams)の長詩『ペルー』(Peru, 1786)は上述のピサロをはじめとするスペイン人征服者によるペルー征服の悲劇を描くものである。リベラルな政治思想を持ち、奴隷制反対論者であったウィリアムズの思想を表すべく、スペイン軍の男性的原理に対抗するものとして、土地としてのペルーやこの地の住民を守るべく奮闘したドミニコ会司祭ラス=カサス(Las-Casas)、さらには擬人化された感受性が一丸となって女性的原理を体現している点について明らかにした。 研究計画の最終年度に当たっては、英文学においてスペインのペルー征服を批判的に描くことの倫理的問題について考察した。特にウィリアムズの『ペルー』を中心に論じ、ウィリアムズがスペインの暴虐と対照的にペルーの被害者としての側面を強調するために、歴史的事件の叙述を基の資料から改変している点について考察した。歴史的問題をテーマにした文学ジャンルにおいて、歴史的事実の改変を行うことは、この文学ジャンルの倫理的問題を問うものである。
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Research Products
(2 results)