2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K13422
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西井 奨 大阪大学, 文学研究科, 講師 (20722755)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 西洋古典学 / ラテン文学 / オウィディウス / ウェルギリウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、オウィディウス『変身物語』が古代ローマの文芸論において重要な位置を占めるものとして、この作品の研究を主に進めた。特に詩人が『変身物語』創作に際し意識していたであろう事柄について、叙事詩の伝統といった文学ジャンルの側面からだけでなく、環境や自然や動物に関する表象からも分析を試みた。この際、ヘーシオドス『仕事と日』やウェルギリウス『牧歌』『農耕詩』の影響も重要であると考え、これらの作品の精読にも努めた。 またギリシアから連なる魂の輪廻転生思想も『変身物語』の解釈には重要なものであることから、関連する哲学・思想関連の古代ギリシア語文献も渉猟し、その理解にも努め、古代ローマの文芸論を多角的に把握するような形で研究を進めた。 今後の研究の展開として、特に『変身物語』第15巻における、ローマ第2代の王ヌマがピュータゴラースの教説を学ぶという際にかなり長く描写されるピュータゴラースの言葉に『変身物語』全体のより良い解釈に繋がるものがあるとして、それと『変身物語』中の個々の物語の描写との対応性の点からも分析を進めていく予定である。またこれと関連する形で、ラテン文学全般におけるオルペウスの表象についても文芸論の重要な位置付けとして調査を進めたい。 また古代ローマの文芸論及び文学作品を、現代の文学理論・批評理論の視点から考察することも検討している。その中でも、特にエコクリティシズムの視点を取り入れて作品の研究を進めることができないかと検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
資料の調査に大きく時間がとられ、口頭発表や論文発表という形をとることができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
口頭発表・論文発表を意識して収集・調査した資料をまとめ、研究内容をブラッシュアップしていく。
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Causes of Carryover |
本年度の研究に必要な金額は使い終わることができ、少額の助成金が残ったので、次年度の研究で必要なものの購入にあてることにする。
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Research Products
(1 results)