2017 Fiscal Year Research-status Report
ヨハン・ザロモ・ゼムラー―ドイツ初期啓蒙主義時代における旧約聖書解釈の問題圏―
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17K13424
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
土屋 京子 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 講師 (60759348)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文献学 / ドイツ語圏 / 聖書解釈学 / 啓蒙主義 / ロマン主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、研究実施計画で「資料調査ならびに文献を精読する準備期間」としたとおり、本研究テーマが対象としているヨーハン・ザロモ・ゼムラーに関する文献情報を国内外で集め、文献目録を作成し、文献の収集ならびに精読を行うことに費やした。 具体的には、まず目標としていた、マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク(MLU)の神学部書庫を中心に、その他、ベルリンとライプツィッヒに位置するドイツ国立図書館において、ゼムラー関連の資料調査を3月15日から27日にかけておこなった。本研究成果については、平成30年度日本独文学会春季研究発表会にて口頭発表で報告し、論文として公表するためにさらなる文献の精読と批判的分析を進めている。 またもうひとつの課題に挙げていたゼムラーの一次文献Abhandlung von freier Untersuchung des Kanons(1771)の邦訳に関してであるが、現在、出版されている版のなかには異本も含まれているために、精査しつつ取り組んでいる。異本の存在に関してであるが、申請書で説明したとおりゼムラーの一次文献に関する批判校訂版が出ていないためであり、申請者が想定していたことであるが、3月の研究滞在によって確かめられた。本書の重要な章の抄訳に関してはコメントなどを添えて、次年度以降にいずれかの学術誌に掲載をするという目標を掲げている。 特筆する必要はないが、本研究テーマに携わる研究者として、18世紀ドイツ語圏に関する研究会には参加し、研究者同士の意見交換や情報の共有に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」にて上記したとおり、ほぼ研究計画どおりに進んでいる。しかし「やや遅れている」という実感があるのは、以下、2点によるところが大きい。 1)研究対象の扱いの難しさ 申請書で言及したとおり、ゼムラーの著作では、現代の学問区分から見ると、神学のみならず社会学や詩学、美学にまで、かなり幅広いテーマが分散的に扱われている。また執筆された年代ごとに文献間で内容の矛盾が大きいといった、研究対象として扱いの難しさがしばしば研究で指摘されている。彼の著作の校訂版も未だに出版されていない。実際に文献にあたる上で苦戦を強いられているというのが実情である。 2)学内外でのイレギュラーな仕事 ある程度、覚悟をしてはいたが、平成29年度は特に学内外で予期できない仕事が課されることが多く、研究に時間を割くのが物理的に難しかった。そのために、8月あるいは9月に予定していた研究滞在が叶わなかったということは、当初の計画から大きく変更せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は文献調査と精読を進めながら、研究の区切りごとに研究会や学会での報告や発表を積極的に行っていく予定である。すでに平成30年度には5月と6月での個別口頭発表のエントリーが承認されている。またより広く本研究テーマを発信するために、国内で数人の研究者たちとともにシンポジウムを行うことを目指す。これにより、本研究のテーマの拡がりを国内の研究者たちとのあいだで共通認識にするのを目標に掲げている。 また「現在までの進捗状況」にて振り返りを行ったとおり、平成29年度は物理的な問題で研究に時間を費やすことが難しかった。文献の精読には、非常に時間がかかるのは自明のことであり、この反省を踏まえて、可能なかぎり研究の時間を確保するように努めることが先決問題である。
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Causes of Carryover |
進捗状況等ですでに言及したとおり、8月あるいは9月に予定していた研究滞在が叶わなかったということは、当初の予算計画から大きく変更せざるをえなかった。
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