2017 Fiscal Year Research-status Report
Study on the Early Poetry of Paul Valery
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17K13425
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鳥山 定嗣 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (80783117)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フランス近代詩 / 象徴主義 / 詩法 / 散文詩 / 『旧詩帖』 / 『若きパルク』 / ピエール・ルイス / アンドレ・ジッド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、未公表詩篇を含むヴァレリーの初期詩篇の全体像を明らかにすることにより、旧来の詩人像(フランス近代詩の変革運動に背を向けた反時代的な古典的詩人)にとどまらないヴァレリーの詩の多面性を示すこと、また青年期の友人や同時代の詩人との関連性を考察することである。本年度の研究成果としては以下の点が挙げられる。 1)初期詩篇と後年の代表作『若きパルク』との関連について、初期の作に頻出する「夕暮れ」の時刻に注目し、従来「朝の作家」(夜明け前に精神の日記「カイエ」に向かう作家)とみなされてきたヴァレリーが青年期には「夕暮れ」を偏愛していたこと、それが「曖昧さ・両義性」を旨とする象徴主義的美学に通じること、さらに『若きパルク』における「夕暮れ」の回想場面に初期詩篇の引用が見られ、それによって沈黙期を隔てる初期と後期の詩作に橋が渡されていることを示した。 2)初期詩篇をもとに編まれた詩集『旧詩帖』について、この詩集の「題名と構成」について論じるとともに、同詩集所収の「詩のアマチュア」について、通常「作者」に身を置くヴァレリーが「読者」として語ったこの散文詩形式の詩論の特異性を考察した。また『旧詩帖』を扱った博士論文(本研究の開始以前に遡るが本研究課題とも密接に関わる)に加筆修正を施したうえで書籍化した。 3)ジッド、ヴァレリー、ルイスによる『三声書簡』邦訳の刊行を機に、同世代の彼ら三人の「青年期の交流」についてまとめた。 4)フランスのセット市ヴァレリー記念館で催された国際シンポジウムに参加し、ヴァレリーとルイスの友情および詩作における相互作用について口頭発表をおこなった。 5)研究実施計画に記した草稿の解読・活字化および初期詩篇の翻訳については、当初予期していなかった国際シンポジウムが入ったため、翻訳の作業は若干遅れているが、草稿の解読・活字化は計画通りに進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はヴァレリーの初期詩篇研究の基礎作りとして、関連草稿の解読・活字化および初期詩篇の翻訳を研究の主軸に据えていた。 「初期詩篇」草稿全2巻の解読・活字化については、電子上で参照可能な1巻(Naf 19002)の解読・活字化の作業を半分ほど終えるとともに、フランス国立図書館でしか閲覧できないもう1巻(Naf 19001)についても、予定通り海外出張し、調査を開始することができた。 初期詩篇の翻訳については、「研究実績の概要」欄に記したように、研究計画を立てる段階では予期していなかった国際シンポジウムでの発表を行うことになったため、当初の見込みほどは進まなかったが、4分の1程度は作業を終えた。 他方、研究成果としての論文は順調に発表しており、研究全体の進捗に支障はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も初期詩篇研究の基礎を固めるべく、フランス国立図書館所蔵の「初期詩篇」草稿全2巻の解読・活字化および初期詩篇の翻訳の作業を継続し、来年度はまず草稿1巻の活字化を完了させることを目指す。初期詩篇の翻訳については上記の理由により一年延長し、遅くとも平成31年度までに完了することにしたい。
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Causes of Carryover |
研究費を効率的に使用したため小額の残額が生じた。次年度の旅費として使用する。
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Research Products
(6 results)