2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on the Early Poetry of Paul Valery
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17K13425
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鳥山 定嗣 九州大学, 人文科学研究院, 専門研究員 (80783117)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヴァレリー / ピエール・ルイス / マラルメ / フランス近代詩 / 象徴主義 / 生成研究 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、未公表詩篇を含むヴァレリーの初期詩篇に光を当てることにより、旧来の詩人像(近代詩の変革に逆行した反時代的な詩人)を見直し、詩人ヴァレリーの多面性を示すこと、また青年期の友人や同時代の詩人の作との関連性を明らかにすることにより、ヴァレリーの詩をフランス近代詩の潮流のなかに正確に位置づけることである。2018年度の研究成果として次の成果が挙げられる。 1)ヴァレリーと友人ピエール・ルイスについて、両者が最も共鳴しあった二つの時期(ルイスが雑誌『ラ・コンク』を創刊した1890年代と、ヴァレリーが長詩『若きパルク』とともに詩作に回帰した1910年代)に焦点を絞り、両詩人の詩作にどのような相互作用が見られるか、また1925年に逝去したルイスに対してヴァレリーがどのようなオマージュを捧げたかを考察し、その成果を論文(雑誌・図書)にまとめた。 2)マラルメ・シンポジウム(9月、慶応義塾大学)に参加し、青年期に「父なる友」ともいうべきマラルメを喪ったヴァレリーがこの死者を弔うべく言葉にならぬ言葉をどのように紡いだか、未定稿「マラルメの墓」および『若きパルク』の再読をとおしてその詳細を示した。また「マラルメの名をめぐって」と題する論文を執筆し、この固有名がはらむ含意とマラルメ自身の反応について、同時代の証言やこの名を詠み込んだ詩篇を踏まえて考察した。 3)日仏翻訳学研究会(2019年3月、京都工芸繊維大学)に参加し、「ヴァレリーと翻訳」というテーマで日仏両言語により口頭発表をおこなった。 4)研究実施計画に記した「草稿の解読・活字化」および初期詩篇の「翻訳」と「体系的分類」については、予期せぬ事態が生じて海外出張ができなかったため(詳細は後述)、作業にやや遅れをきたしているが、初期詩篇草稿全2巻中の1巻(Naf 19002)については当初の予定どおり解読・活字化を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の研究実施計画として、(1)草稿の解読・活字化、(2)初期詩篇の翻訳、(3)初期詩篇の体系的分類を挙げていたが、(1)については、9月初旬の台風に伴う関西空港連絡橋の事故発生により関空発の航空便が欠航となったため、予定していた夏季休暇中の海外出張が不可能になり、フランス国立図書館においてのみ閲覧可能な草稿1巻(Naf 19001)を参照することができなかった。そのためこの草稿の解読作業が遅れているが、他方、同図書館の電子サイト Gallica で参照可能なもう1巻(Naf 19002)については当初の計画どおり解読・活字化の作業を完了した。(2)と(3)についても (1)の作業と連動するため、当初の予定よりやや遅れをきたしているが、草稿の解読・活字化の作業を終えた詩篇については順調に進んでいる。 また、海外出張のキャンセルに加えて、当初予期していなかった「マラルメ・シンポジウム」と「日仏翻訳学研究会」における口頭発表が入ったため、研究実施計画に順序の変更が生じた(最終年度に予定していた「青年期の友人および同時代の先行詩人の作品との比較」に先回りして着手する一方、「初期詩篇の翻訳」にやや遅れが生じている)。また「日仏翻訳学研究会」への参加により、「翻訳」という新たなテーマにも足を踏み入れることになったが、ヴァレリーは青年期から詩の翻訳を手がけているように、このテーマは本研究と関わりが深く、今後の研究を発展させるうえでも有益であった。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、第一に「初期詩篇草稿の解読・活字化」の作業を完了させることを目指す。「現在までの進捗状況」の欄に記したように、本年度はフランス国立図書館に行くことができず、草稿解読の作業がやや遅れている。当初の研究実施計画に即して、草稿の解読・活字化を2019年度までに完了させるために、次年度はこの作業を最優先することにし、他方「初期詩篇の翻訳」の作業はもう一年延ばして最終年度までに終えることにする。 また、草稿の解読作業と並行して、初期詩篇の体系的分類を進め、さらにそれを中後期詩篇(主に『旧詩帖』所収の初期詩篇の改作および『魅惑』所収詩篇)と比較することにより、ヴァレリー初期の詩作の特徴を探る。
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Causes of Carryover |
2018年9月初旬の台風およびそれに伴う関西空港連絡橋における事故発生により、関空発パリ行きの航空便が欠航となり、夏季休暇中に予定していた海外出張を実行することができなかったため、その分の経費(往復の航空費および約2週間のパリ滞在費)が残額として生じた。次年度の旅費にあてるとともに、2019年4月から所属の異動に伴い必要となった物品(コンピューターやプリンタなど)の購入費として使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Book] Paul Valery et les ecrivains (“Paul Valery et Pierre Louys : un dialogue autour de La Jeune Parque”)2018
Author(s)
Michel Jarrety, Franck Lestringant, Daniel Leuwers, Bertrand Marchal, Juan Carlos Mestre, Kolja Micevic, Annie Salager, Antonietta Sanna, John Taylor, Teiji Toriyama, Maithe Valles-Bled
Total Pages
200 (165-192)
Publisher
Editions Fata Morgana
ISBN
978-2-37792-023-5