2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on the Early Poetry of Paul Valery
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17K13425
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鳥山 定嗣 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (80783117)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヴァレリー / 草稿研究 / フランス近代詩 / 象徴主義 / 翻訳 / ウェルギリウス / マラルメ / 韻律 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、未公表詩篇を多く含むヴァレリーの初期詩篇を発掘・精査することにより、旧来の詩人像(フランス近代詩の変革運動に逆行した詩人)を見直し、ヴァレリーの詩の多面性を示すとともに、それをフランス近代詩の潮流のなかに正確に位置づけることである。本年度の研究成果として以下の点が挙げられる。 1)研究実施計画に記した「初期詩篇」草稿全2巻の「解読・活字化」について、夏季休暇中にフランス国立図書館に通い、当初の予定どおり「草稿の解読・活字化」の作業を完了した(その成果は最終年度にあたる2020年秋頃に公表予定)。 2)昨年度「マラルメ・シンポジウム」において行った口頭発表の内容をもとに、日本語論文を執筆した(未刊行)。 3)昨年度「日仏翻訳学研究会」において行った口頭発表の内容をもとに、フランス語および日本語による論文をそれぞれ執筆した(未刊行)。 4)上記の「翻訳」のテーマを発展させるかたちで、ヴァレリーによるウェルギリウス『牧歌』の韻文訳とそれに触発されて執筆された『樹についての対話』との関連性について考察し、その成果を共著書(分担執筆)および紀要論文にまとめた。前者では両作品における主題的連関(樹木と愛)と作品の構成(円環構造)について論じる一方、後者では両作品に潜む形式上の一致(ウェルギリウス『牧歌』の翻訳は無韻のアレクサンドランからなるが、『樹についての対話』も散文の外見のもとに同じく無韻のアレクサンドランのリズムを秘めていること)を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、三年目にあたる本年度は、当初の予定どおり「初期詩篇」草稿全体の「解読・活字化」の作業を完了することができた。また、昨年度から継続していた「初期詩篇の翻訳」および「体系的分類」についても作業は順調に進んでいる。本年度に計画していた「初期詩篇と中後期詩篇の比較」については作業が若干遅れているが、その反面、当初予期していなかった研究(研究実績3,4)が進展しており、本研究に新たな視点と発展の可能性をもたらしている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度(2020年度)は本研究の最終年度にあたるため、これまでに完了した「初期詩篇」草稿全2巻の「解読・活字化」の成果を整理するとともに、それに「注解」(各々の詩の形式・内容上の特記すべき点、ヴァレリーの中後期詩篇および他の詩人の作品との関連性についての指摘)を加えた上で、日本ヴァレリー研究会の機関誌『ヴァレリー研究』に公表する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、2020年3月に予定していた研究会への参加を控えたため残額が生じた。次年度の論文投稿費として使用する。
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Research Products
(2 results)