2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K13428
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
時田 郁子 成城大学, 文芸学部, 准教授 (60757657)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 亡命文学 / 大航海時代 / 複数世界論 / 天文学的発見 |
Outline of Annual Research Achievements |
デーブリーンの『アマゾン』(1937/38)を研究対象としてヨーロッパと新世界について考察した。デーブリーン作品において新世界は二通り、ヨーロッパから見て大西洋の彼方、水平方向にあるアメリカ大陸と、垂直方向の先にある宇宙に分類される。一点目に関して、コロンブス以降のヨーロッパ人の大西洋横断、スペインによるアステカ帝国征服といった歴史的事実を踏まえて、近代ヨーロッパにおけるアメリカの意義を考察し、デーブリーンのアメリカ像を輪郭づけた。二点目に関して、コペルニクスやブルーノ、ガリレイによる天文学的発見の衝撃とこれと絡む複数世界論の思想史を踏まえて、デーブリーンが彼らに託した役割を考察した。デーブリーンが新大陸を作品のテーマにしたのは、彼が亡命せざるをえなかったドイツの社会的状況と関係する。そこで彼の亡命生活中の活動、とりわけ、シオニズム運動との関わり、カトリック入信に至る宗教的転回を追い、彼が新世界にどのような希望を託したかを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『アマゾン』は長大な作品であり、またヨーロッパとアメリカ大陸との関係に関する文献と近代ヨーロッパにおける宇宙観に関する文献が多岐に亘るため、資料を精読・調査するのに時間がかかるが、それは当初予定していた通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
デーブリーンが自然哲学を構想した背景には、彼が向き合ってきた諸問題―少年期に父親が出奔したため一家が崩壊したこと、ユダヤ人であること、医者として糧を得ること、亡命、息子たちとの関係、宗教上の問題等―がある。これまでは作品内在的研究を重視してきたが、デーブリーンの自然哲学を解明するためには自伝的要素の研究を欠かすことができない。2019年度は『容赦なし』や『バビロン放浪』といった自伝的作品やエッセイを調査・考察する。
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Causes of Carryover |
注文した書籍が海外から発送されるものであり、年度内に届かなかったため、次年度使用額が生じたが、すべてすでに到着しており、2019年度予算で購入した。
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Research Products
(1 results)