2018 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける蘇軾「和陶詩」の受容と発展に関する研究
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17K13430
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
原田 愛 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (50638294)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 宋代文学 / 蘇軾 / 和陶詩 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、蘇軾「和陶詩」の源を探るにあたり、唐代以後の陶淵明受容の論文が多く、新たに考察することが困難であったので、蘇軾と蘇轍の帰隠への意識について「烏台詩案」から考察することにした。「烏台詩案」の先行研究については、蘇軾の文学性や筆禍事件としての歴史的意義についての論攷が多い。しかし、このとき、蘇轍も蘇軾に連座して左遷されており、今回、その経緯や蘇轍の思想の変遷に関して詳しく考察することで、「烏台詩案」およびその後の流謫が後年の彼らの「和陶詩」創作の基礎となったことが分かった。平成30年7月に口頭発表し、そこでの批正を受けて、翌年3月に「蘇轍烏臺詩案考」と題して論攷にまとめた(東英寿編著『唐宋八大家の世界』所収)。 また、蘇門四学士と「和陶詩」の研究も引き続き行った。蘇門の筆頭である黄庭堅については、平成29年度に既に考察し、論文としたため、他の晁補之・張耒・秦観について、それぞれの受容と創作についての資料を収集し、分析を行った。来年度に学会にて発表し、論文を作成する予定である。 東アジア全体の「和陶詩」受容についても別に研究を進めたが、朝鮮半島における「和陶詩」については既に先行研究があったため、日本における「和陶詩」について考察することにした。拙稿「蘇軾『和陶詩集』編纂考」で宋代から元代までの大陸における『和陶詩集』の編纂過程を考察したが、そこから『和陶詩集』の日本への流入および収蔵・翻刻の過程、そして、日本における「和陶詩」創作の両面から資料を収集した。これらの資料については整理が十分にされていないため非常に難航したが、来年度には論文としてまとめるつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の対象がこれまで学界であまり注目されていない詩人や資料であったため、十分に整理されていなかった。よって、収集・分析に時間がかかり、論文を作成するには至らなかったが、来年度に研究をまとめる目途は付けられた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は研究の最終年であるため、研究のまとめを行いたい。優先度に鑑みて、現在行える課題のうち、蘇門四学士の「和陶詩」について、そして、日本における「和陶詩」について、それぞれ資料を収集しながら、考察を加えて論文にまとめるつもりである。 また、来年度9月は隔年で行われている中国宋代文学学会が上海復旦大学で開催される。これまでの研究成果を発表し、様々なご意見を頂いて研究に活かしたいと考える。 四学士より後の南宋から清代までの中国大陸の「和陶詩」創作については、分析したところ、創作した人数も作品数も多いため、来年度に全てを終わらせることは無理であろうと推測するが、その場合はその後の課題としたい。
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Causes of Carryover |
次年度に隔年開催の国際学会である中国宋代文学学会があることがわかっていたので、旅費は次年度に余裕を持たせることにした。謝金もそこで発表する論文のネイティブチェックに主に使いたい。
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