2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K13432
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
田中 智行 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (50531828)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中国文学 / 古典文学 / 白話小説 / 翻訳 / 金瓶梅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、明代を代表する白話長篇小説のひとつであり、『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』とともに四大奇書にかぞえられる『金瓶梅』の訳注つき新訳の刊行を目標としている。この作品には、旧訳刊行以来、おびただしい研究の蓄積がある。最新の研究状況を踏まえた新訳の刊行によって、研究者のみならずわが国の一般読書人にこの作品の真面目を提示することを目指している。 2017年度においては、2018年刊行予定の上巻(三分冊のうち。序跋ならびに第一回~第三十三回を収録)について、すでに作成した初稿にもとづき校正作業をおこない、刊行準備を進めた。複数回にわたって全体を原文と再照合して訳語・訳注を再検討し、部分的には訳注を書き足すなどした、上巻だけでも二段組みで700頁を超える分量のため、本年度はこの作業に殆どの時間を費やした。 上巻の校正作業と並行して、2020年度の刊行を目指す中巻(第34~66回)の初稿作成作業を続行し、第五十三回の途中までを訳出した。第五十三回~第五十七回は、古くより偽作(補作)のうたがいが強いといわれてきた箇所であり、他に見られぬ語彙が集中的にみられることなどが指摘されてきた。もっとも、この補作自体が本作品の最初期の受容の一環であるともいえ、補作者なりの作品理解にもとづいて他の箇所から浮き上がらぬよう工夫していた形跡もみられる。真贋や版本研究の材料としてのみとらえられる傾向のあった補作箇所について、語彙面のみならず小説手法上の特徴をも検討しつつ訳出作業に着手した段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本来の計画では、本年度においては第五十五~五十七回程度までを訳出することを目指していたが、実際には第五十三回途中までしか終わらなかった。ただこれは、二分冊予定だった訳書の構成を三分冊に計画変更したため、上巻の校正作業を本年度においておこなう必要が生じたためであり、作業が遅滞したわけではない。全体として見ればほぼ予定通りに進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度においてはまず『新訳金瓶梅』上巻が刊行される予定である。ひきつづいて中巻の初稿作成作業を継続したい。一般に偽作といわれる第53~57回については、真贋のみならず作品受容の一環としてとらえることを心掛け、可能であればその観点をも訳注に取り込みたいと考えている。文献調査や情報交換などのため、数回の出張を予定している。
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