2019 Fiscal Year Research-status Report
中国・朝鮮半島・日本における書儀の普及と受容に関する比較研究
Project/Area Number |
17K13434
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山本 孝子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (10746879)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 書儀 / 書札礼 / 敦煌 / 五杉練若新学備用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「門状」および「献物状」を中心に、書札礼の普及・変容の問題について以下の研究を進め、学会での報告3回、学術論文3本にまとめ公表した。 (1) 唐から宋にかけての書札礼の変化を明らかにするために、「門状」という書式について考察し、書式を復元した。その書式は公状を応用したもので、初期の門状の使用対象は宰相に限定されていた。時代の流れとともに使用範囲が拡大し、宋代には完全な私信へと性質の変化が確認された。また、門状から派生したと考えられる類似の用途・機能を持つ各種状と比較して違いを明確にし、それぞれ厳密に定義付けた。 (2)訪問時に不在であった場合、どのような対応がなされたのか、門状がどのように処理されたのかを考察した。相手が不在の場合にも、持参した門状はその訪問先に残される。そして、受け取った側は「封門状回書」「大状頭書」と呼ばれる書状を添えて送り返したことを確認した。 (3) 『参天台五臺山記』にも各種「門状」が収録されており、成尋のような平安中期の入宋僧らも少なくとも中国滞在中においては「門状」に関わる礼儀作法を理解し、実践していたものと考えられる。 (4) 敦煌写本書儀に見られる「献物状」「送物」「遣物書」の三種の手紙は、いずれも送付状として贈り物に附すために用いられるものである。これらの使い分けについて論じ、「献物状」は官人らの間で用いられる上行文書であり、公状の書式が転用されること、「送物」は「献物状」の簡略化された書式であること、「遣物書」は対等な相手への贈り物に附す添え状であることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画案に示した個別の課題については研究成果を公表できており概ね順調に進んではいるものの、一方で、中国・朝鮮半島・日本全体を見通したマクロな視点からの分析が十分に行えておらず、計画通りに成果をまとめることができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本来であれば最終年度であり、これまでの成果をまとめる予定であったが、「現在までの進捗状況」の通り、研究計画にやや遅延が生じている。そのため、研究期間の延長を申請し、承認されたところである。手元にある原稿の補足修正作業を加速し、これまで蓄積してきた成果の全体の統合をおこない公表していきたい。
|
Causes of Carryover |
当初見積もっていたよりも図書購入のための費用がおさえらえた。中国の雑誌に投稿予定であった論文について、先方の事情により締め切りが次年度に延期されたため、年度内に支出を予定していた校閲費(中国語ネイティブチェック)が未使用のまま残った。この間に加筆修正を進めており、次年度に完成稿の翻訳費(日文中訳)あるいは校閲費としての支出を見込んでいる。
|
Research Products
(6 results)