2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13439
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
鯨井 綾希 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (10757850)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 品詞論 / 語彙分類 / コロケーション / 計量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近年構築が盛んな日本語コーパスを積極的に活用して、コーパス言語学が得意とする、大規模データとコンピュータを用いた計量分析を行い、日本語の文章中で使われる語彙の相互関係を分析していく。上記の方法論的視座に基づく研究を通して、使用された語彙が文章の構造や形成プロセスにどのように作用しているのかという語彙論と文章論にまたがる問題を明らかにする。 分析に際しては、文章として実現されたコーパス内の語彙のどのような側面に注目するかを定めることが求められる。そのため、研究初年度である平成29年度は、いくつかの語彙的要素を対象として分析を行い、計量する上で取り上げることができる言語事象を探った。具体的には、以下の2点に関する研究を行い、公表した。 1、形容動詞相当の語群を対象に、形容動詞としての典型性を後接要素との共起関係から求め、多変量解析を用いて語群の分類を行った。それにより、形容動詞相当の語群が、隣接する品詞との関係の中で具体的にどのようなグラデーションを描いて分布しているのかを明らかにした。 2、「美しい」と「きれいだ」という類義語を取り上げ、それぞれが修飾する名詞を収集し、共起語の語彙ネットワークを構築した後、共起する名詞の種類の違いや相互の類似度などを分析した。それにより、「美しい」と「きれいだ」という類義語が文章中で使われる際の意味的な違いを明らかにした。 以上の研究を通して、文章中における語彙の相互関係を明らかにする上での視座および方法論に関する方向性について目星をつけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度である平成29年度は、年度途中の所属変更に伴い、研究環境を再構築することに時間を割いた。そのため、研究成果の公表という点で進捗にやや遅れが生じてしまった。ただし、平成29年度の研究により、本研究課題を行う上での方法論的な部分に目処がつけることができた。その点で研究初年度としての最も重要な部分の検討はできたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までで、語彙的な面に注目した計量分析の方法論的な可能性は吟味できた。平成30年度ではその方法を文章という単位により強く結び付け、文章と語彙の相互関係が密接である部分を重点的に分析していく。特に、計量語彙論の領域で従来より考えられてきた諸仮説の検証と精密化を行うことで、文章を構成する語彙の振る舞いをより詳細に明らかにしていくことが可能であると考えられるため、そうした視座からの分析を推し進めていくこととする。
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