2018 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語移動動詞と経路表現の共起に関するコーパスを用いた意味的・統語的分析
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17K13441
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 美穂 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 講師 (40787610)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドイツ語 / 移動動詞 / 不変化詞動詞 / 経路表現 / アスペクト / 事象構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、アスペクトとの関連性を視野に入れつつ、ドイツ語移動動詞と経路表現との共起関係をコーパス事例に基づき、実証的に調査・分析する試みである。移動を表す基礎動詞のみならず、特定の経路を含意する不変化詞動詞をも対象とし、具体的な経路表現との共起頻度・共起可能な経路表現の組み合わせを問題とすることで、移動事象をアスペクト的に限定し得る経路表現の言語化に関わる意味的・統語的制限を明らかにすることを目指している。 2018年度はまず、前年度の成果に基づき、durch (= through)を伴う移動の不変化詞動詞で観察される「空間的解釈」と「時間的解釈」の意味分化について考察を深め、事象構造(event structure)の枠組みでの定式化を行った。研究成果は年度の後半に論文にまとめ、学術雑誌に投稿した(査読中)。 次に、起点を表すaus (= out)および着点を表すein (= in)を伴う不変化詞動詞の事例調査と分析を行った。なかでも、乗り物を使った移動を表すfahren (= drive)を基礎動詞とするausfahrenおよびeinfahrenを例に、次のことを明らかにした:(1)経路表現との共起という点では、動詞の語彙意味に内包された経路を具体的に表出する経路表現の出現頻度が他の経路概念の表示と比べてもっとも高い。(2)起点ないし着点の表出・非表出という点では、ausfahrenでは起点の解釈が文脈に負うことで表出されない例が観察される一方、einfahrenでは着点が文中で表出される傾向が顕著である。 さらに、広義の態の交替現象(自由与格や使役・受動)における移動動詞の振る舞いに着目し、自由与格構文およびbekommen(= get)受動文では、移動動詞と共起する経路表現が構文の成立可否および解釈の可能性と密接に関連することを、研究発表や論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、特定の経路を含意する不変化詞動詞を対象とした事例調査を進め、研究成果の一部を研究発表や論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2019年度は、研究の総括と成果発表の年とし、学会や研究会等で積極的に発表を行う。年度のはじめには事例調査の見直しと再検討を行い、理論面での考察とあわせて、最終成果の方向性を定める。その後は、複数の学会・研究会で口頭発表を行い、研究成果を論文発表の形で結実させることを目指す。
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Research Products
(5 results)