2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K13442
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大塚 行誠 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (90612937)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 記述言語学 / チン語支 / クキ・チン系 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミャンマー連邦共和国におけるアショー・チン語やティディム・チン語,インド共和国における消滅の危機に瀕した言語,ラルテー語などのクキ・チン系諸言語の調査・研究と並行して,ボム語の基礎調査を行った。今年度の主な調査活動は,海外での文献収集並びに基本的な情報に関する聞き取り調査である。研究発表としては,ボム語と関連のあるティディム・チン語の方向接辞について,日本言語学会秋季大会のワークショップで報告したものがある。 今年度,インド共和国ミゾラム州に渡航したことで,インドやバングラデシュ,ミャンマーで「ボム」と呼ばれているクキ・チン系の民族に関する現地の文献を収集することができた。さらに,ミゾラム州アイゾール市のボム学生協会会員からはボム語の使用状況やボム語話者の置かれた現状に関する聞き取り調査を行いながら,ボム語の音韻体系や基礎語彙についての下調べも行い,本格的な調査を始動することができた。今後もボムの言語や文化に関するインフォーマントとして全面的に協力することで合意を得ることができたため,インドへの定期的な渡航は続けていく予定である。 上記の現地での聞き取りの中で,インド側のボム語とバングラデシュ側のボム語との間に大きな方言差があるということが分かったため,バングラデシュ側のボム語も確認する必要が生じている。しかし,当面は,インド側のボム語方言に研究対象を絞り,インフォーマントの協力も得ながらその音韻体系を明らかにしていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
特に聞き取り調査と調査結果の分析がやや遅れていていると感じている。他の業務により現地における調査が当初計画していた期間より短くなってしまい,詳細な分析に必要な言語データを得ることができなかったためである。現状では,一般公表するに足るデータを示すことができていない。しかし,現地の調査では,インフォーマントの協力もあって文献収集を順調に進めることはできた。そのため,次回の調査までにはそれらの基礎文献を分析し,音韻に関する具体的調査と基礎語彙の収集をスムーズに進めていけるように準備しておきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の調査の中で,インド側のボム語とバングラデシュ側のボム語との間に大きな方言差があるということが分かった。さらに,ミャンマーにもボム語話者がいるとの情報がいくつかの先行文献に記載されているものの,今回の調査ではそのような事実や関連する情報を得ることができなかった。しかし,今年度の調査活動を通じて,インド側のインフォーマントから調査協力を得る約束が得られた為,当面はインド側の方言に主な研究対象を絞りつつ,具体的な音韻および文法構造を明らかにしていこうと考えている。そして,その調査から得られたデータをもとにして,対照研究の観点から,バングラデシュ側とミャンマー側におけるボム語の調査も随時行っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
教務および現地のインフォーマントの都合もあって,当初想定していた調査期間よりも短くなったため,次年度使用額が生じた。次年度以降の物品費,旅費,およびインフォーマントへの謝礼や英文校正をはじめとした謝金にあてる予定である。
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