2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K13442
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大塚 行誠 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (90612937)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | チン語支 / 記述言語学 / ミャンマー / インド |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度に続き,2019年度も国内外でボム語やその他のチン系諸言語の資料を収集した。そして,ボム語の音韻と文法の記述に向け,ボム語の基礎語彙調査リストの整理と音声(声調)の分析も行った。 さらに,ボム語と同系統のアショー・チン語やティディム・チン語の文法と語彙に関する調査の報告も国内外のワークショップや研究会合で行った。 例えば,2019年8月にはシンガポールの南洋理工大学で開かれたWorkshop on linguistic and cultural diversity in the Northeast India-Myanmar-Southwest China regionにおいて,アショー・チン語の文法に見られるビルマ語からの影響について報告した。その後,2019年11月には慶応大学で開かれたTaLK (Theoretical Linguistics at Keio) 2019: Myanmar Linguistics, State of the Artの研究会合においてアショー・チン語の語彙に見られるビルマ語からの借用語について口頭発表を行った。 フィールドワークは,2019年8月から9月にかけての1か月間弱と2020年の2月に約1週間ミャンマーで実施した。2020年3月に長期間ボム語の調査を行う予定だったが,新型コロナウイルス感染拡大の影響と現地情勢の悪化によって渡航を中止せざるを得なくなった。その為,フィールドワークは断念し,ボム語の基礎語彙リストと音声データを整理・分析しつつ,今後の調査に向けた準備を進めている。さらに,ボム語をはじめとして様々なチン系諸言語に見られる方向接辞や名詞修飾表現に焦点を当て,論文の執筆を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年にはミャンマー在住のボム語インフォーマントとの連絡・打ち合せを積極的に行いながら,年度末のフィールドワークに向けた準備を進めてきた。しかし,2019年度末に計画していた長期間におよぶ言語調査の計画は新型コロナウイルスの影響によって中止となり,本格的な聞き取り調査を十分に行うことができないままとなってしまった。そのため,今年度の進捗状況を昨年度よりも一段階下げ,「やや遅れている」と評価した。しかし,2020年度からもミャンマー在住のボム語インフォーマントから全面的に調査に協力するという約束を得られたことから,ミャンマーへの渡航が可能となった時点で中長期のフィールドワークを実施し,やや遅れた状況にある調査をできるだけスピードを速めて進めていく予定である。ミャンマーおよびインドにおける安全なフィールドワークが可能となるまでは,日本国内でこれまでに得た言語データを確認・分析しつつ,ボム語を含めたチン系諸言語の対照研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は前半において調査の準備が順調に進んでいたものの,後半では新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界情勢の変化により,ボム語の聞き取り調査の実施が事実上不可能となってしまった。その為,2020年度はこれまでの調査計画の遅れを取り戻すべく,オンラインでインフォーマントと連絡を取り合いながら,次のフィールドワークに向けてさらに入念な準備を行う予定である。そして,日本からミャンマーとインド各地への渡航が可能となった時点で現地に向かいたいと考えている。ボム語インフォーマントへの聞き取り調査のほか,アショー・チン語やティディム・チン語などのチン系諸言語のデータ収集を積極的に行う予定である。日本国内では,対照基礎語彙リストの作成や音韻・文法に関する論文の執筆,文法スケッチの公開に向けた準備を進めていく。
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Causes of Carryover |
2019年度末にボム語の調査の為,長期間ミャンマーでフィールドワークを行う予定であった。しかし,新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界情勢の変化,そしてミャンマーやインド,日本による出入国規制が厳しくなったことによって計画自体を中止せざるを得なくなった。その為,相当額の旅費が未使用のままとなり,次年度使用額が生じる結果となった。2020年度も国外渡航が難しい状況が続くとも考えられるが,日本からミャンマー・インド各地への安全で自由な渡航が可能となった時点でフィールドワークを再開したいと考えている。教務および現地のインフォーマントの都合により,計画していた調査期間より短くなる可能性もある。そのため,現地のインフォーマントとオンラインを通して打ち合せや最低限の調査も行いたいと考えている。今後はインターネット環境の整備に必要な費用(物品費)のほか,インフォーマントへの謝金,調査研究に関わる国内外出張の費用,研究関連資料の購入費,そして論文執筆の際の校正において使用していく予定である。
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