2018 Fiscal Year Research-status Report
A Contrastive Study of Japanese and English Reflexive Constructions: With Special Reference to the Transitivity and Agentivity
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17K13446
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小薬 哲哉 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (40736493)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再帰構文 / 再帰代名詞 / 非飽和名詞 / 自分 / 自分から / 自分で |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、日本語再帰代名詞「自分」を中心に、特にその副詞的用法と英語の強意再帰代名詞用法(e.g. He painted the wall himself.)の調査を行った。これは、再帰代名詞「自分」と共起する述語の意味制約に関する研究から派生したものである。特に副詞的な振舞いを示す「自分から」の用例を、現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)から網羅的に抽出、その用法の意味論的分類を行うことで、本来の代名詞的用法との異なりを記述的に明らかにした。この成果は研究会や論文で既に発表しており、引き続き理論的観点も加えて修正や検討を重ねていく予定である。同時に「自分で」のコーパス調査も開始しており、「自分から」の研究成果を併せ、現段階での成果を俯瞰できるような形で研究成果をまとめている。2019年度も継続していく予定である。 また、海外の研究者の協力を得て、日本語再帰代名詞の共同研究プロジェクトを立ち上げ、共同執筆の論文を投稿中である。このプロジェクトでは、従来の研究では容認不可能とされた、無生物の先行詞をとる「自分」を考察対象にしている。2019年度にはこのテーマの心理言語学的実験を行い、その条件を分析し、成果を国際学会に投稿する予定である。当該共同研究プロジェクトは、これまで明らかにされてこなかった再帰代名詞「自分」の新たな側面に光を当てる研究で、今後の進展は従来の再帰代名詞研究に記述的・理論的貢献をもたらすことが見込まれる。 また、2017年度に行った身体行為構文と動作表現構文・同族目的語構文との受動化の条件に関する比較研究の成果を英文学会関西支部シンポジウムProceedingsとして論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度では、従来予定していた範囲からさらに研究の考察対象が広がることとなり、この点において、予想していたよりも大きな成果が得られた。特に日本語の「自分から」や「自分で」のような再帰代名詞の強調・副詞的用法、およびその英語との比較研究は、本研究のテーマである「再帰構文の受動化」という比較的狭い領域のみならず、さらに広い日英語の再帰代名詞研究全体へと成果をもたらすことが見込まれる。 一方、英語の身体行為構文の受動化の研究や日本語との対照研究はあまり進展させることができなかった。よって、2019年度にこれを本格的に進展させ、日英語の身体行為構文および直接・間接再帰構文の受動化の体系の違いを明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語再帰代名詞の研究 日本語の「自分から」と「自分で」の諸用法に関する考察をまとめ、8月に行われるInternational Conference of Cognitive Linguisticsで発表することが決まっている。さらに、それぞれの詳細な記述的研究の成果を、国内学会に応募する予定である。また、これら2つの用法の分析が、他の強調用法に適用できるのかを今後検討する。 また海外研究協力者との共同研究プロジェクトとして、日本語再帰代名詞に関する心理言語学的実験を行い、その成果を国際学会に投稿予定である。 一方で、日本語の身体行為構文の意味分類を今後さらに精力的に行うとともに、英語の再帰他動詞構文を身体部位を中心に考察し、意味分類を行う。こうした分類をもとに、受身がどれほど可能となっているのかを検討し、本研究が提案する仮説の検証を行う。 また、身体行為構文と動作表現構文・同族目的語構文の受動化の比較研究も、さらに考察を深め、分析を発展させ、論文として成果を発表していく。
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Causes of Carryover |
研究対象の拡大とそれに伴う研究手法の調整に伴い、当初予定していた海外でのアンケート調査の代わりに、BNC・COCAコーパスにおける用例の網羅的調査を行うこととした。このためのアルバイト人件費の使用を予定している。また、海外国際学会のための旅費や、海外研究協力者との共同研究およびその学会発表のための費用が必要となる。このように、2019年度はこれまでの研究を補強するための基礎的データ収集・調査、および研究成果の発表と国際共同研究プロジェクトに使用する予定である。
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[Journal Article] 非飽和名詞の意味論と受動化2018
Author(s)
小薬哲哉
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Journal Title
日本英文学会第90回大会Proceedings: The 90th General Meeting of The English Literary Society of Japan
Volume: 1
Pages: 267-268
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