2017 Fiscal Year Research-status Report
現代韓国語の尊敬形の不使用基準に関する研究:社会言語学的観点と文法的観点から
Project/Area Number |
17K13449
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
金 アラン 上智大学, 言語教育研究センター, 助教 (90711135)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 韓国語 / 主体敬語 / -si- / 尊敬形の不使用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、韓国語の尊敬形‘-si-’の不使用状況を明らかにすることを目的としている。韓国語の尊敬形‘-si-’は、日本語の尊敬語よりも使用範囲が広く、丁寧体を使う相手であれば、例えば大学1年生が2年生の先輩に対しても普通に使用する(例:ku chayk ilkusyesseyo?(その本お読みになりましたか))。しかし、丁寧体に常に‘-si-’が共起するわけではなく、一連の会話において‘-si-’が用いられたり用いられなかったりする。韓国語の尊敬形‘-si-’に関するこれまでの研究を見ると、‘-si-’が使用された文にのみ焦点を当てており、‘-si-’が使用されない文やその状況について考察したものは見当たらない。そこで、‘-si-’の不使用状況を明らかにするために、平成29年度にはドラマシナリオをデータとし、親密度がある程度形成された関係を中心に分析を行なった。その結果、以下のことが明らかになった。説明疑問文や判定疑問文のように、相手に返答を求める場合は‘-si-’が共起される傾向が強い反面、修辞疑問文のように相手に返答を求めない場合には‘-si-’が使用されない場合もあることが分かった。また、命令・依頼文では、相手の行動によって自分が恩恵を受ける時は‘-si-’が共起される傾向が強い反面、自分が恩恵を受けない、もしくはその恩恵が少ない場合は‘-si-’が使用されないこともある。さらに、相手に要求する行動の負担度によっても‘-si-’の使用に違いが見られ、負担度が低い場合は‘-si-’が使用されない場合が見られた。つまり、社会的関係や親密度だけでなく、発話内容や文の機能、またその発話が聞き手にどの程度負担を与えるかなどが複合的に‘-si-’の使用に影響を与えていることが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主体敬語および尊敬形‘-si-’に関する最近の研究動向を把握し、ドラマシナリオにおける‘-si-’の使用・不使用状況について確認した。その結果をもとに、大学生を対象としたアンケートを作成している。
|
Strategy for Future Research Activity |
ドラマシナリオを分析した結果は、平成30年度に学会で発表する予定である。現在作成しているアンケートは平成30年度前期に実施し、アンケート協力者の中から自然会話の収集に協力してくれる人を募集し、収録を行う予定である。主に語用論的観点や社会言語学的観点から分析・考察していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
ドラマの書き起こし作業を依頼したが、予想より作業に時間がかかり、平成29年度の締切日に間に合わなかった。ドラマの書き起こし作業は平成30年度の前期に終わる予定である。その謝金分が平成29年度中に執行されなかったため、次年度使用額が生じた。
|